尿失禁とは、自分の意思とは関係なく尿がもれてしまう状態のことです。
「年齢のせいだから仕方ない」と思われがちですが、実際には筋力、神経、ホルモン、病気、生活習慣など、さまざまな要因が関係しています。
命に関わる病気ではないことが多いものの、
・外出が不安になる
・睡眠の質が低下する
・人との交流を避けるようになる
など、生活の質(QOL)に大きく影響することがあります。
日本泌尿器科学会や国際的なガイドラインでも、早めの相談と適切な治療が勧められています。
尿失禁の主な種類
腹圧性尿失禁
もっとも多いタイプのひとつです。
・咳
・くしゃみ
・笑う
・重い物を持つ
など、お腹に力が入ったときに尿がもれます。
骨盤底筋のゆるみが主な原因で、
・妊娠や出産
・加齢
・肥満
などが関係します。
女性に多くみられます。
切迫性尿失禁(過活動膀胱)
急に強い尿意が起こり、トイレまで我慢できずにもれてしまうタイプです。
膀胱が過敏になり、自分の意思と関係なく収縮してしまうことが原因と考えられています。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
膀胱に尿がたまりすぎ、少しずつあふれるようにもれる状態です。
・前立腺肥大症
・糖尿病
・神経の病気
などが関係することがあります。
機能性尿失禁
尿をためる機能自体ではなく、
・歩行障害
・手の不自由さ
・認知症
などにより、トイレに間に合わずにもれてしまうタイプです。
なぜ起こるの?
尿失禁は、ひとつの原因だけでなく、複数の要因が重なって起こることが多いです。
代表的な原因として、
・骨盤底筋や尿道括約筋のゆるみ
・膀胱の過敏な収縮
・前立腺肥大症などによる尿の通り道の狭さ
・脳卒中や脊椎疾患などの神経障害
・閉経後のホルモン変化
・便秘
・慢性的な咳
・肥満
・利尿薬や睡眠薬などの薬剤
・カフェインやアルコールのとりすぎ
などがあります。
どんな症状が出るの?
・咳やくしゃみで尿がもれる
・急に強い尿意が起こる
・トイレが近い
・夜間に何度もトイレに起きる
・尿が出し切れない感じがする
・下着が湿る
などの症状がみられます。
症状の程度には個人差があります。
どうやって診断するの?
診断では、まず症状の種類や経過を詳しく確認します。
そのうえで、
・尿検査
・残尿測定
・超音波検査
などを行います。
必要に応じて、
・尿流測定
・膀胱機能検査(尿流動態検査)
などの専門的な検査を行うこともあります。
また、
・血尿がある
・発熱がある
・強い痛みがある
・足のしびれや脱力がある
場合には、別の病気が隠れていないか慎重に確認します。
治療の基本
生活習慣の見直し
まずは日常生活の改善が大切です。
・カフェインやアルコールをとりすぎない
・便秘を予防する
・適正体重を目指す
・長時間の尿の我慢を避ける
・就寝前の過剰な水分摂取を控える
などが役立ちます。
骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋を鍛える体操は、腹圧性尿失禁に対して特に有効とされています。
継続することが重要で、理学療法士などの指導を受けると効果が高まりやすいとされています。
膀胱トレーニング
排尿間隔を少しずつ延ばしていく方法です。
切迫性尿失禁や過活動膀胱で行われます。
薬物療法
症状に応じて、
・膀胱の過敏な収縮を抑える薬
・尿道を締めやすくする薬
などが使われます。
閉経後の女性では、ホルモン補充療法が検討される場合もあります。
手術療法
重症の腹圧性尿失禁では、尿道を支える手術が行われることがあります。
また、前立腺肥大症による症状では、前立腺の手術で改善する場合があります。
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、尿失禁に対する補助的な治療法として研究されています。
特に腹圧性尿失禁や過活動膀胱では、一部の研究で症状改善が報告されています。
考えられている作用としては、
・骨盤底周囲の筋肉の緊張調整
・血流改善
・自律神経のバランス調整
・尿意の過敏さの軽減
などがあります。
ただし、鍼灸だけで根本原因を治すものではありません。
現在の医学では、
・骨盤底筋トレーニング
・生活改善
・医師による治療
を基本としながら、補助的に鍼灸を併用する方法が現実的と考えられています。
また、
・感染症
・出血しやすい病気
・妊娠中
・重い持病がある
場合には、事前に医師へ相談することが大切です。
早めの受診が必要な症状
次のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
・急に症状が悪化した
・血尿がある
・発熱や背中の痛みを伴う
・排尿できない
・足のしびれや麻痺がある
・尿失禁によって日常生活に強い支障がある
神経の病気や尿路感染症など、別の病気が隠れていることがあります。
放置するとどうなるの?
症状を我慢していると、
・尿路感染症
・皮膚のかぶれ
・睡眠障害
・活動量の低下
・気分の落ち込み
などにつながることがあります。
特に高齢の方では、外出や運動を避けることで、筋力低下や転倒リスクにつながる場合もあります。
まとめ
尿失禁は、年齢だけが原因ではなく、
・筋力
・神経
・ホルモン
・生活習慣
など、さまざまな要因が関係して起こります。
適切な診断と治療によって、多くの場合は改善が期待できます。
治療では、
・生活習慣の見直し
・骨盤底筋トレーニング
・薬物療法
などが基本になります。
鍼灸は、症状緩和や体調管理を支える補助的な方法として役立つ可能性があります。
「恥ずかしいから」と我慢せず、気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
