妊娠悪阻(にんしんおそ)とは、妊娠初期を中心に起こる「つわり」が強くなり、日常生活に大きな支障が出る状態をいいます。

単なるつわりより症状が重く、
・食事や水分がほとんど取れない
・何度も吐いてしまう
・体重が大きく減る
などがみられることがあります。

重症になると、脱水や栄養不足を起こし、点滴や入院が必要になることもあります。

なぜ起こるの?

妊娠悪阻の原因は、まだ完全には解明されていません。

現在は、妊娠によるホルモン変化が大きく関係していると考えられています。

特に、
・ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)
・エストロゲン
などのホルモン増加が関係すると考えられています。

また、
・自律神経の変化
・胃腸の動きの低下
・においへの過敏さ
・疲労やストレス
・不安や緊張
なども影響すると考えられています。

過去の妊娠でつわりが強かった方や、多胎妊娠(双子など)の場合は、症状が強く出やすいことがあります。

どんな症状が出るの?

主な症状は、
・強い吐き気
・繰り返す嘔吐
です。

そのほかにも、
・食事や水分が取れない
・体重減少
・強いだるさ
・ふらつき
・口の渇き
・尿量の減少
・においに敏感になる
などがみられます。

重症になると、
・脱水
・電解質異常
・低栄養
を起こし、母体の体調に大きな影響が出ることがあります。

どうやって診断するの?

診断では、
・吐き気や嘔吐の程度
・食事や水分がどれくらい取れているか
・体重減少の有無
・尿量
などを確認します。

必要に応じて、
・尿検査
・血液検査
を行い、
・脱水
・電解質バランス
・栄養状態
などを調べます。

また、胃腸炎や甲状腺の病気など、ほかの病気による吐き気ではないことも確認します。

治療の基本

治療では、母体と赤ちゃんの安全を守りながら、症状を和らげることが大切です。

水分と栄養の補給

水分が取れない場合には、点滴による補液が行われます。

必要に応じて、
・ブドウ糖
・電解質
・ビタミン(特にビタミンB1)
などを補います。

重度の栄養不足では、入院管理が必要になることもあります。

吐き気を抑える治療

症状に応じて、吐き気止めの薬が使われることがあります。

海外のガイドラインでは、
・ビタミンB6
・ドキシラミン
なども使用されています。

食事と生活の工夫

無理に食べようとせず、
・少量ずつ食べる
・食べられるものを優先する
ことが大切です。

また、
・十分な休養
・睡眠
・ストレスを減らす工夫
も重要とされています。

鍼灸は役立つの?

鍼灸は、妊娠悪阻に対する補助的な方法として研究されています。

特に、手首付近にある「内関(ないかん)」という部位への刺激は、吐き気をやわらげる可能性があるとして、世界的にも研究されています。

考えられている作用としては、
・吐き気の軽減
・自律神経の調整
・胃腸の働きのサポート
・緊張や不安の緩和
などがあります。

一部の研究では、吐き気や嘔吐が軽くなったという報告がありますが、研究結果にはばらつきもあります。

そのため、現在の医学では、
「標準治療を基本にしながら、補助的に活用する」
という位置づけになっています。

また、妊娠中は体が普段と大きく異なるため、施術は妊婦への対応経験がある鍼灸師のもとで、安全に配慮して行うことが重要です。

早めの受診が必要な症状

次のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。

・水分がほとんど取れない
・何度も吐いてしまう
・体重が急に減っている
・尿量が少ない
・ふらつきや動悸がある
・意識がぼんやりする
・日常生活ができないほどつらい

重い脱水や栄養障害が進むことがあるため、我慢しすぎないことが大切です。

まとめ

妊娠悪阻は、妊娠初期にみられる強いつわりの状態です。

ホルモン変化や自律神経の影響などが関係していると考えられており、症状の強さには個人差があります。

治療では、
・水分と栄養の補給
・吐き気を抑える治療
・十分な休養
を組み合わせながら、安全に管理していきます。

鍼灸は、吐き気や緊張を和らげる補助的な方法として役立つ可能性がありますが、医療機関での治療を基本にしながら、安全に併用することが大切です。

つらい症状を我慢し続けず、早めに医療機関へ相談しましょう。