膝前面痛症候群とは、膝のお皿(膝蓋骨)の周囲や膝の前側に痛みが起こる状態をいいます。

特に、スポーツをする若い方や成長期の方に多くみられますが、運動習慣の少ない方でも起こることがあります。[1]

医学的には「膝蓋大腿関節痛症候群(PFPS)」と呼ばれることもあります。

レントゲンなどで大きな異常が見つからなくても、痛みが続くことがあります。[1]

なぜ起こるの?

膝前面痛症候群は、膝のお皿と太ももの骨の間に繰り返し負担がかかることで起こると考えられています。

特に、

・太ももの筋力バランスの乱れ
・股関節や足首の柔軟性低下
・運動のしすぎ
・急な運動量の増加
・姿勢やフォームのくずれ

などが関係します。[2]

また、

・長時間座る
・階段の昇り降り
・しゃがむ動作

など、日常生活の動作でも膝に負担がかかることがあります。

女性では、骨盤や脚の角度の影響で起こりやすいとされる報告もあります。[3]

どんな症状が出るの?

主な症状は、膝のお皿の周囲や前側の痛みです。

次のような場面で痛みが出やすくなります。

・階段の昇り降り
・しゃがむ
・走る
・ジャンプする
・長時間座ったあとに立ち上がる

「膝の奥が重だるい」「鈍く痛む」と感じる方もいます。

症状が進むと、運動を続けにくくなることもあります。

どうやって診断するの?

診断は、症状の経過や痛みの出る動作を確認しながら行います。

医師は、

・どの動きで痛むか
・膝のお皿周囲に圧痛があるか
・筋力や柔軟性の状態
・歩き方や姿勢

などを確認します。

必要に応じて、

・レントゲン検査
・MRI検査

などを行い、

・半月板損傷
・靱帯損傷
・軟骨の障害
・成長期の骨の病気

など、ほかの病気がないかを調べます。[1]

治療の基本

治療の中心は、膝への負担を減らし、筋力や動きのバランスを整えることです。

まずは、

・運動量の調整
・膝を休ませる
・痛みが強い動作を減らす

ことが大切です。

そのうえで、

・太ももの筋力トレーニング
・股関節まわりの運動
・ストレッチ
・フォーム改善

などの運動療法が行われます。[4]

必要に応じて、

・消炎鎮痛薬
・テーピング
・サポーター

などを用いることもあります。

多くの場合、手術をせずに改善が期待できます。[1]

日常生活で気をつけたいこと

症状を悪化させないためには、日頃の体の使い方も重要です。

・急に運動量を増やさない
・運動前後にストレッチを行う
・長時間同じ姿勢を避ける
・クッション性のある靴を選ぶ
・体重管理を心がける

ことなどが役立ちます。

無理に運動を続けると、痛みが長引くことがあるため注意が必要です。

鍼灸は役立つの?

鍼灸は、膝前面痛症候群に対する補助的な方法として用いられることがあります。

鍼やお灸の刺激によって、

・太ももや膝周囲の筋緊張をやわらげる
・血流を促す
・痛みを感じにくくする

可能性があると考えられています。

一部の研究では、運動療法と組み合わせることで、痛みや動作時の不快感が軽減したという報告があります。[5]

ただし、研究結果にはばらつきがあり、鍼灸だけで根本的に改善できるとは限りません。国際的な専門家コンセンサスでも、鍼治療の有効性は「不確実」と位置づけられています。[6]

そのため、筋力トレーニングや生活調整を基本としながら、補助的に取り入れることが大切です。

受診の目安

次のような場合は、医療機関への相談を検討しましょう。

・膝の痛みが数週間以上続く
・歩行や運動に支障がある
・膝が腫れている
・痛みが徐々に悪化している
・膝が引っかかる、動かしにくい

強い腫れや発熱を伴う場合は、ほかの病気の可能性もあるため、早めの受診が必要です。

まとめ

膝前面痛症候群は、膝への繰り返しの負担によって起こることが多い症状です。

特に、運動量の多い方や成長期の方にみられます。[1]

治療では、運動量の調整や筋力・柔軟性の改善が重要になります。[4]

鍼灸は、筋緊張や痛みをやわらげる補助的な方法として役立つ可能性がありますが、その有効性については専門家の間でも評価が定まっていません。[5][6]

症状が長引く場合は、自己判断で無理を続けず、医療機関へ相談しましょう。

【脚注一覧】

[1] Bump JM, Lewis L. Patellofemoral Syndrome. StatPearls. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2026 Jan(最終更新2023年2月13日).(PFPSは膝前面痛の最も一般的な原因の一つであり、他の関節内・膝蓋周囲病変を除外したうえでの除外診断であるとする総説。適切なリハビリテーションにより最大3分の2の患者が症状改善に成功すると報告。病因は多因子性であり、トレーニング様式に続発することが多いとされる)

[2] Powers CM, et al. の病態総説(Collins NJ, Barton CJ, van Middelkoop M, et al. 2018 Consensus statement on exercise therapy and physical interventions to treat patellofemoral pain. Br J Sports Med. 2018;52(18):1170-1178. 中で引用)。PFPSの病態は、膝蓋大腿関節への異常な応力、股関節・膝関節の筋機能不全に続発する動的アライメント異常、神経筋制御の変化など多因子性であるとする記載。

[3] Vora M, Curry E, Chipman A, Matzkin E, Li X. Patellofemoral pain syndrome in female athletes: a review of diagnoses, etiology and treatment options. Orthop Rev (Pavia). 2018;10(1):7281.(女性アスリートにおいて、骨盤形状・下肢アライメント(Q角等)の解剖学的特徴がPFPS発症リスクに関与しうるとする総説)

[4] Collins NJ, Barton CJ, van Middelkoop M, Callaghan MJ, Rathleff MS, Vicenzino BT, et al. 2018 Consensus statement on exercise therapy and physical interventions (orthoses, taping and manual therapy) to treat patellofemoral pain: recommendations from the 5th International Patellofemoral Pain Research Retreat, Gold Coast, Australia, 2017. Br J Sports Med. 2018;52(18):1170-1178.(国際的な専門家41名によるコンセンサス。股関節に着目した運動と膝(大腿四頭筋)に着目した運動を組み合わせた運動療法、および複合的介入・足底装具を、疼痛・機能改善のために推奨。膝関節・腰椎モビライゼーション単独や電気治療機器は推奨されないと明記)

[5] Allam NM, Alsirhani H, Alruwaili MB, et al. Effect of laser acupuncture on pain, range of motion, and function in patellofemoral pain syndrome: a randomised controlled trial. Front Med (Lausanne). 2025;12:1613197.(18〜25歳の若年女性を主な対象とした4週間のRCT。運動療法にレーザー鍼治療を併用した群は、運動療法単独群と比較して疼痛(VAS)・関節可動域・機能スコア(Kujala score)で有意な改善を示した。ただし対象が若年女性に偏っており、結果の一般化には限界があると著者自身が明記)

[6] Collins NJ, Barton CJ, van Middelkoop M, et al. 2018 Consensus statement on exercise therapy and physical interventions to treat patellofemoral pain. Br J Sports Med. 2018;52(18):1170-1178.(同コンセンサス声明の中で、鍼治療/ドライニードリングの有効性については「不確実(uncertainty)」と明記されており、推奨には至っていない)

・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。