押手をしっかり固定したら、鍼を入れた鍼管を押手の親指と人差し指の間にはさみ、皮膚の上にまっすぐ立てます。

この操作を丁寧に行わないと、弾入するときや鍼を進めるとき、さらに鍼を抜くときに痛みが出る原因になります。

そのため、皮膚や組織に余計な負担をかけないよう、正しい方法で行うことが大切です。


1.挿管の注意点

挿管とは、鍼管を刺鍼部に正しくセットする操作のことです。

1)皮膚を自然な状態に保つ

鍼管を押手の親指と人差し指の間にはさむときは、指を大きく開かず、その間に鍼管を差し込むようにします。

このとき最も大切なのは、押手によって皮膚が引っ張られたり、ずれたりしていないことです。

皮膚が自然な状態を保っていることを確認してから操作を行います。


2)鍼管はまっすぐ押し当てる

鍼管が皮膚に触れたら、ややしっかりとした力で、皮膚に対して垂直に押し当てます。

その際は、押手の親指と人差し指でしっかり固定し、安定した状態を保ちます。

ただし、鍼管を押すときに刺手が鍼柄を強く持ったままだと、鍼に余計な力が加わり、痛みの原因になることがあります。


3)横から差し込まない

鍼管を親指と人差し指の間へ入れる際、指先の横から差し込む人もいます。

しかし、この方法では皮膚が不自然に引っ張られやすくなるため、避けるべきとされています。


4)鍼管が動かないように支える

鍼管を垂直に立てた後は、弾入の際にぐらつかない程度の力で、押手による左右からの支えを保ちます。

強すぎず弱すぎず、安定した状態を維持することが大切です。


2.排管の注意点

排管とは、弾入後に鍼管を抜き取る操作のことです。

弾入が終わったからといって、すぐに鍼管を抜いてはいけません。

まず一〜二呼吸ほど間を取り、落ち着いてから次の操作に移ります。


1)皮膚を動かさないように抜く

鍼管を引き上げるときは、押手の親指と人差し指の力が偏らないよう注意します。

刺鍼部を中心として、皮膚や皮下組織が引っ張られたり、ずれたりしないように丁寧に行います。


2)力のバランスを崩さない

鍼管を持ち上げ始めると、押手の力のかかり方が変わりやすくなります。

そのため、操作中も皮膚への圧力が急に変化しないよう注意する必要があります。


3)指を大きく開かない

排管の際に、押手の親指と人差し指を大きく開くことは避けるべきとされています。

指を大きく開くと皮膚が引っ張られたり、組織がずれたりして、痛みや違和感の原因になることがあります。


挿管・排管で大切な考え方

挿管と排管を行うときに最も大切なのは、皮膚や皮下組織を常に自然な状態に保つことです。

鍼を中心として、

  • 押手の上下の圧力
  • 押手の左右の圧力

が自然に釣り合うように操作します。

また、親指と人差し指から伝わる力が偏らないよう注意することも重要です。

鍼を主役と考え、押手はその働きを助けるものとして使うことで、刺鍼や抜鍼の際に起こりやすい痛みや不快感を防ぐことができます。

参考文献:柳谷素霊『鍼灸の実技』(昭和三十四年)