五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれる病気です。[1]
40〜60歳代に多くみられ、肩関節のまわりに炎症やこわばりが起こることで、痛みや動かしにくさが生じます。[1][2]
代表的な症状は、
・腕が上がらない
・服を着替えにくい
・後ろに手を回せない
・肩を動かすと痛む
・夜中にズキズキ痛んで眠れない
などです。
多くの場合、症状は徐々に始まり、数か月から1年以上かけて少しずつ改善していきます。[3]
ただし、回復までの期間には個人差があり、1〜2年ほど症状が続くこともあります。[3][4]
なぜ起こるの?
五十肩の原因は、まだ完全には解明されていません。[5]
現在では、肩関節のまわりにある関節包、腱、靱帯などに炎症や硬さが起こることが関係していると考えられています。[5][6]
背景として、
・加齢による組織の変化
・肩の使いすぎや負担
・姿勢の乱れ
・運動不足
・軽い外傷
・糖尿病や甲状腺疾患などの影響
などが関与するとされています。[6][7]
レントゲン検査では、はっきりした異常が見つからないことも少なくありません。
どんな経過をたどるの?
五十肩は、段階的に変化することが多いとされています。[3][4]
炎症期
強い痛みが出やすい時期です。
特に夜間痛が特徴で、寝返りでも痛むことがあります。[3][4]
拘縮期
痛みは少し落ち着きますが、肩が固まり、動かせる範囲が狭くなります。
「腕が上がらない」「後ろに手が回らない」と感じやすい時期です。[3][4]
回復期
少しずつ肩の動きが改善していきます。
ただし、無理に動かしすぎると炎症がぶり返し、回復が遅れることがあります。[4]
どうやって診断するの?
診断では、
・いつから痛いか
・どの動きで痛むか
・夜間痛の有無
・動かせる範囲
などを確認します。
必要に応じて、
・レントゲン
・超音波検査
・MRI
などを行い、腱板断裂、石灰沈着性腱炎、骨折、神経障害など、別の病気が隠れていないかを調べます。[5]
治療の基本
五十肩の治療は、痛みを和らげながら、少しずつ肩の動きを回復させることが基本です。[8]
主な治療には、
・痛み止め(NSAIDsなど)
・湿布や外用薬
・温熱療法
・ストレッチや運動療法
・リハビリテーション
・関節内注射
などがあります。[8]
強い痛みがある時期は、無理に動かさず、炎症を悪化させないことが大切です。
一方で、まったく動かさない状態が長く続くと、肩がさらに固まりやすくなります。
痛みの少ない範囲で、少しずつ動かしていくことが勧められています。[8]
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、五十肩に対する補助的な治療として用いられることがあります。
研究では、鍼治療によって、
・肩まわりの筋肉の緊張をやわらげる
・血流を促す
・痛みを軽減する
・夜間痛を和らげる
・肩の動きを改善しやすくする
可能性が報告されています。[9]
特に、リハビリや運動療法と組み合わせることで、日常生活が楽になる場合があります。[9]
ただし、鍼灸だけで五十肩そのものを完全に治すわけではありません。[9][10]
症状や状態に応じて、医療機関での治療と併用しながら行うことが大切です。
抗凝固薬を服用している方、重い持病がある方、妊娠中の方は、事前に医師や鍼灸師へ相談しましょう。
日常生活で気をつけたいこと
・痛みが強い日は無理をしない
・完全に動かさない状態は避ける
・痛みのない範囲で軽く動かす
・肩を冷やしすぎない
・入浴や温熱で温める
・急な運動や重い荷物を避ける
・ストレッチは「気持ちよい範囲」で行う
強い痛みを我慢して無理に伸ばすと、かえって悪化することがあります。
受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
・転倒後から急に痛みが出た
・腕がまったく上がらない
・強いしびれや筋力低下がある
・発熱や腫れを伴う
・胸や首まで強い痛みが広がる
・夜も眠れないほど痛みが強い
骨折や神経の病気、腱板断裂など、別の病気が隠れていることがあります。[5]
まとめ
五十肩は、肩の痛みや動かしにくさが続く病気です。
多くの場合、時間の経過とともに改善していきますが、回復には数か月から1年以上かかることがあります。[3][4]
治療では、痛みを抑えながら、少しずつ肩の動きを取り戻していくことが大切です。[8]
鍼灸は、肩の痛みやこわばりをやわらげ、リハビリを続けやすくする補助的な方法として役立つ場合があります。[9]
つらい症状を我慢しすぎず、必要に応じて整形外科や専門家に相談しましょう。
【脚注一覧】
[1] Le HV, Lee SJ, Nazarian A, Rodriguez EK. Adhesive capsulitis of the shoulder: review of pathophysiology and current clinical treatments. Shoulder Elbow. 2017;9(2):75-84.
標準整形外科学(医学書院)「肩関節周囲炎」の項。
[2] DePalma AF. Loss of scapulohumeral motion (frozen shoulder). Ann Surg. 1952;135(2):193-204.(中年期に好発するという古典的知見。近年の疫学データもこれを支持)
"Gongs Mobilization" Approach for Frozen Shoulder. (一般人口の2〜5%に発症するとの記載)
[3] Reeves B. The natural history of the frozen shoulder syndrome. Scand J Rheumatol. 1975;4(4):193-196.(炎症期・拘縮期・回復期の3段階、自然経過は1〜3年に及ぶとする古典的な報告)
[4] Kraal T, et al. / Current concepts on the intervention for adhesive capsulitis(総説). 各病期のおおよその期間(炎症期2〜9か月、拘縮期4〜12か月、回復期は最長24か月に及ぶ)に関する報告。ただし近年の研究では、この3段階モデルが必ずしも全例に当てはまらず、自然回復しないまま機能制限が残存する例も報告されている点に留意。
[5] StatPearls: Adhesive Capsulitis (Frozen Shoulder). NCBI Bookshelf, 2025.(原因は完全には解明されていないこと、診断は主に臨床所見に基づき、画像検査は腱板断裂などの鑑別に用いられることの記載)
[6] Le HV, Lee SJ, Nazarian A, Rodriguez EK. Adhesive capsulitis of the shoulder: review of pathophysiology and current clinical treatments. Shoulder Elbow. 2017;9(2):75-84.(関節包の炎症・線維化が病態の中心であるとする総説)
[7] DePalma AF. Loss of scapulohumeral motion (frozen shoulder). Clin Orthop Relat Res. 2008;466(3):552-560.(糖尿病、甲状腺疾患などとの関連について報告)
[8] StatPearls: Adhesive Capsulitis (Frozen Shoulder). NCBI Bookshelf, 2025.(NSAIDs、理学療法、関節内注射などの保存的治療が中心であり、適切な治療により約80%が正常に近い機能を回復するとの記載)
[9] Ben-Arie E, et al. The Effectiveness of Acupuncture in the Treatment of Frozen Shoulder: A Systematic Review and Meta-Analysis. Evid Based Complement Alternat Med. 2020;2020:9790470.(鍼治療により疼痛スコア(VAS)・肩関節機能スコア(CMS)・屈曲可動域の有意な改善を認めたとする報告。ただしエビデンスの質は非常に低いと評価されている)
You J, et al. Acupotomy Therapy for Shoulder Adhesive Capsulitis: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Evid Based Complement Alternat Med. 2019;2019:2010816.
[10] Green S, Buchbinder R, Hetrick SE. Acupuncture for shoulder pain. Cochrane Database Syst Rev. 2005;(2):CD005319.(試験の質・症例数の限界から、鍼治療単独の有効性を明確に示す強いエビデンスは不足していると結論。短期的な疼痛・機能改善の可能性は示唆されるが、確定的な効果とは言えない点に留意)
・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。
