ホットフラッシュとは、更年期に多くみられる症状のひとつで、突然体が熱くなったり、汗が急に出たりする状態をいいます。

顔や首、胸のあたりが急にほてり、数分ほどでおさまることもあれば、何度も繰り返すこともあります。

夜間に起こると、寝汗や睡眠不足の原因になることがあります。

ホットフラッシュなどの血管運動神経症状は更年期に多くみられますが、その頻度には地域差があります。
2021年の国際調査では、中等度~重度の血管運動神経症状の有病率は、欧州40%、米国34%、日本16%でした。[1]

更年期は、一般的に40代後半から50代にかけて、卵巣の働きが低下し、女性ホルモンが大きく変化する時期です。

ホットフラッシュは、その変化に伴って起こる代表的な症状のひとつです。日本産科婦人科学会は、更年期にみられる、
器質的な変化によらない多様な症状を「更年期症状」、そのうち日常生活に支障をきたすものを「更年期障害」と定義しています。
国内の調査では、ホットフラッシュのような血管運動神経症状よりも、倦怠感や肩こりを訴える方が多いことが特徴とされ、更年期障害の患者さんの約6割に抑うつ傾向がみられるとも報告されています。[2][3]

なぜ起こるの?

主な原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少です。

エストロゲンが低下すると、脳の体温調節を行う部分が影響を受け、体温のコントロールが不安定になりやすくなります。

その結果、

・皮膚の血管が急に広がる
・汗が大量に出る
・動悸やのぼせを感じる

といった反応が起こると考えられています。

また、次のような要因で症状が強くなることがあります。

・ストレスや緊張
・睡眠不足
・アルコールやカフェイン
・辛い食べ物
・喫煙
・運動不足
・体重増加
・急な温度変化

どんな症状が出るの?

症状の出方には個人差があります。

よくみられる症状として、

・顔や首のほてり
・急な発汗
・のぼせ
・動悸
・寝汗
・寒気
・頭がぼんやりする感じ
・いらいらや不安感
・眠りが浅い

などがあります。

症状によって、仕事や家事、睡眠に影響が出ることもあります。

どれくらい続くの?

症状が続く期間には個人差があります。

数か月で落ち着く方もいれば、数年続く方もいます。

ホットフラッシュの持続期間には個人差があります。
数か月で落ち着く方もいれば、数年にわたって続く方もいます。
一般に時間の経過とともに軽くなる傾向がありますが、一部では長期間続くこともあります。

どうやって診断するの?

診断では、

・症状の内容
・起こる時間帯
・月経の変化
・年齢
・生活状況

などを確認します。

必要に応じて血液検査を行い、

・ホルモンの状態
・甲状腺の病気
・貧血
・感染症

など、ほかの病気が隠れていないかを調べることがあります。

治療の基本

治療は、症状の強さや生活への影響に合わせて行われます。

生活習慣の見直し

まずは生活の工夫が大切です。

・室温を調整する
・通気性のよい服を選ぶ
・睡眠をしっかりとる
・軽い運動を続ける
・ストレスをため込みすぎない
・アルコールや刺激物を控えめにする

などが勧められます。

ホルモン補充療法(HRT)

ホットフラッシュに対して効果が高い治療として、ホルモン補充療法があります。

不足したエストロゲンを補うことで、ほてりや発汗、不眠などの改善が期待できます。
国際閉経学会は、禁忌に該当しない場合、中等度から高度の更年期障害に対してホルモン補充療法を第一選択の治療として推奨しています。[3]

ただし、

・血栓症
・乳がん
・子宮体がん
・肝臓の病気

などでは注意が必要な場合があります。
なお、子宮のある方にエストロゲンを単独で使用すると子宮内膜増殖症・子宮内膜がんのリスクが高まるため、通常は黄体ホルモンとの併用療法が行われます(子宮を摘出された方は、エストロゲン単独療法が可能です)。[3]

医師と相談しながら、安全性を確認して行います。

ホルモン以外の薬

ホルモン療法が使えない場合には、

・一部の抗うつ薬
・自律神経に作用する薬

などが使われることもあります。

鍼灸は役立つの?

鍼灸は、更年期症状に対する補助的な方法として研究されています。

最近の研究では、ホットフラッシュの頻度やつらさの軽減に役立つ可能性が報告されていますが、研究の設計によって結果が大きく異なります。

代表的なコクランレビュー(16件のRCT・1,155例)では、鍼治療を「何も治療しない場合」と比較すると症状の軽減がみられた一方、鍼治療を「本物に似せた偽の鍼治療」と比較した場合には、明確な差は確認されませんでした。
また、ホルモン補充療法と比較すると、鍼治療の効果はより小さいとされています。
このレビューでは、含まれた研究の多くが小規模・短期間であり、エビデンスの質は低い、または非常に低いと評価されています。[4]

一方で、より新しい系統的レビューでは、伝統的な鍼治療は偽鍼と比較して症状の重症度の改善に統計学的な差がみられたと報告するものもありますが、症状の頻度や生活の質については、偽鍼との間に差が見られなかったとも報告されています。[5]

このように、鍼を刺すという体験自体が症状の改善に関わっている可能性も考えられますが、これは研究結果からの一つの解釈であり、確定的な結論ではありません。研究によって結論が分かれているのが現状です。

鍼やお灸の刺激によって、

・自律神経のバランスを整える
・緊張を和らげる
・睡眠の質を改善する
・肩こりや頭痛を軽減する

といった作用が期待されています。

ただし、鍼灸だけで更年期症状を治すものではありません。

医療機関での治療を基本としながら、補助的に取り入れることが大切です。

受診の目安

次のような場合は、医療機関への相談が勧められます。

・症状が強く、日常生活に支障がある
・動悸や息切れが続く
・急な体重減少がある
・強い不安や気分の落ち込みが続く
・不正出血がある
・40歳未満で更年期のような症状がある
・症状が急に悪化した

ホットフラッシュに似た症状は、

・甲状腺の病気
・心臓の病気
・薬の副作用
・感染症

などでも起こることがあります。

自己判断せず、必要に応じて検査を受けることが大切です。

まとめ

ホットフラッシュは、更年期に多くみられる代表的な症状ですが、その頻度には地域差があり、日本人女性では欧米ほど高くないとされています。[1]

女性ホルモンの変化によって起こり、ほてりや発汗、不眠などを伴うことがあります。

生活習慣の見直しや、必要に応じたホルモン補充療法などの医療的な治療によって、症状の改善が期待できます。[3]

鍼灸は、体調を整える補助的な方法として役立つ可能性がありますが、偽の鍼治療と比較した質の高い研究では効果がはっきりせず、研究によって結論が分かれています。[4][5]

つらい症状を我慢しすぎず、医師や専門家と相談しながら、自分に合った対処法を見つけていくことが大切です。

【脚注一覧】

[1] Nappi RE, Kroll R, Siddiqui E, Stoykova B, Rea C, Gemmen E, Schultz NM. Global cross-sectional survey of women with vasomotor symptoms associated with menopause: prevalence and quality of life burden. Menopause. 2021;28(8):875-882. doi:10.1097/GME.0000000000001793.(40~65歳の閉経後女性を対象とした国際調査。中等度~重度の血管運動神経症状の有病率は、欧州40%、米国34%、日本16%と報告された。日本では欧米と比較して血管運動神経症状の頻度が低かった。また、更年期症状として「疲労・だるさ」「筋肉・関節の痛み」「睡眠障害」などが多く報告された)

[2] 厚生労働省「更年期世代の女性の健康支援に関する学習資材」(日本産科婦人科学会の定義を引用).(更年期症状は器質的変化に起因しない多様な症状、更年期障害はそのうち日常生活に支障をきたす病態と定義。国内の更年期女性では、血管運動神経症状よりも倦怠感・肩こり・物忘れの訴えが多いのが特徴。更年期症状の期間は平均7年、長い場合は10年以上継続するとされる)

[3] 公益社団法人日本産科婦人科学会「更年期障害」患者向け解説ページ/『産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023』日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会, 2023.(更年期障害患者の抑うつ傾向は約60%と報告。国際閉経学会(IMS)は、禁忌に該当しなければ中等度〜高度の更年期障害に対しHRTをgold standardとして推奨。エストロゲン単独投与は子宮内膜増殖症・子宮体がんのリスクを高めるため、子宮のある方には黄体ホルモンとの併用療法が行われるとする記載)

[4] Dodin S, Blanchet C, Marc I, Ernst E, Wu T, Vaillancourt C, Paquette J, Maunsell E. Acupuncture for menopausal hot flushes. Cochrane Database Syst Rev. 2013;2013(7):CD007410. doi:10.1002/14651858.CD007410.pub2.(16件のRCT・1,155例のコクランレビュー。鍼治療を偽鍼と比較した場合、有意差は見られなかった。無治療との比較では一定の効果がみられたが、ホルモン療法と比較すると効果はより小さかった。エビデンスの質は低い、または非常に低いと評価されている)

[5] Nam EY, Park JY, Lee JY, Jo TY, Kim DI. Traditional acupuncture for menopausal hot flashes: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Eur J Integr Med. 2018;17:119-128.(伝統的な鍼治療を偽鍼と比較した系統的レビュー・メタ解析。症状の重症度は有意に改善したが、頻度・QOLについては偽鍼との間に有意差が見られなかった)

・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。