耳鳴とは、実際には周囲に音がないにもかかわらず、音が聞こえるように感じる状態をいいます。

「キーン」「ジー」「ザー」などの音として感じることが多く、片耳だけに出る場合もあれば、両耳に感じる場合もあります。

耳鼻咽喉科では比較的よくみられる症状のひとつです。
国内のガイドラインでは、耳鳴を一度でも感じたことがある人を含めた広い意味での有病率は人口の15〜20%とされる一方、日常生活に支障が出るような臨床的に問題となる耳鳴は、人口の2〜3%(国内で約300万人)とされています。[1]

なぜ起こるの?

耳鳴は、耳から脳にかけての「音を処理する仕組み」に変化が起こることで生じると考えられています。

主な関連要因として、
・加齢による聴力の低下
・大きな音への長期曝露
・耳の病気(内耳障害など)
・首や肩の筋肉の緊張
・ストレスや疲労
などがあります。

近年の研究では、耳だけでなく、脳が音の情報をどう処理するかという「中枢神経の変化」も関係していると考えられています。
耳鳴の多くは内耳性の難聴に合併しており、聴覚路のいずれかの部位に生じた異常な神経興奮が関係すると考えられています。
発生部位が内耳(蝸牛)にあると想定される場合を「末梢性耳鳴」、脳などの中枢神経系にあると想定される場合を「中枢性耳鳴」と呼ぶことがありますが、両者を明確に区別することは臨床的に難しく、実際には両方の要素が関わっていると考えられています。[1]

原因がはっきり特定できないケースも少なくありません。

どんな症状が出るの?

耳鳴の感じ方には個人差があります。

・高い音(キーン)
・低い音(ゴー)
・一定の持続音
・脈拍に合わせた音(拍動性)

など、さまざまな形があります。臨床の場では、脈とは関係のない「非拍動性耳鳴」が多く、その多くは加齢に伴う難聴に合併してみられます。[2]

また、
・静かな場所で強く感じる
・夜や就寝時に気になりやすい
・集中しづらい
・不安感が強くなる
・眠りにくい

といった影響が出ることもあります。
重度の耳鳴は、うつ・不安・不眠などを伴いやすいことが指摘されています。[1]

どうやって診断するの?

診断では、まず症状の詳しい聞き取りが行われます。

・いつから始まったか
・どのような音か
・片耳か両耳か
・聞こえにくさの有無
・めまいの有無

などを確認します。耳鳴による苦痛の程度は、「耳鳴苦痛度質問票」という質問票を用いて評価されることがあります。[2]

そのうえで、
・聴力検査
・鼓膜の検査
・必要に応じた画像検査

などを行い、耳や脳の病気が隠れていないかを調べます。

治療の基本

耳鳴の治療では、「音を完全になくすこと」よりも、「気になりにくくすること」が重要とされています。

主な治療には、

・原因となる病気の治療
・薬物療法(症状に応じて)
・音響療法(環境音などの活用)
・補聴器の使用(難聴がある場合)
・認知行動療法などの心理的アプローチ

などがあります。難聴を伴う耳鳴に対して補聴器を用いる音響療法は、エビデンスが強く、行うことが強く推奨される治療法として位置づけられています。[1]

生活習慣の改善やストレス対策も重要です。

鍼灸は役立つの?

鍼灸は、耳鳴に対する補助的な方法として用いられることがあります。

首や肩、頭部などへの刺激によって、

・筋肉の緊張をやわらげる
・血流を改善する
・自律神経のバランスを整える

といった作用が期待されると考えられています。

その結果として、耳鳴の「感じ方」が軽くなる可能性が示唆されています。
8件のランダム化比較試験(504人)をまとめた解析では、耳鳴の大きさそのものを表す指標(VASスコア)については、対照群と比較して統計学的に明確な差は認められませんでした。
一方で、耳鳴による生活への支障度を表す指標(THIスコア・TSIスコア)については、鍼治療群で有意な改善がみられたと報告されています。[3]

ただし、すべての耳鳴に有効とは限らず、効果には個人差があります。含まれた研究の多くは対象人数が少なく、質も高くないと評価されており、確実な結論を出すにはさらに質の高い研究が必要とされています。[3]

標準的な耳鼻咽喉科の治療の代わりにはならず、補助的な位置づけです。

受診の目安

次のような場合は、早めの受診が勧められます。

・耳鳴が急に始まった
・片耳の聞こえが急に悪くなった
・めまいを伴う
・強い頭痛を伴う
・日常生活や睡眠に支障がある
・脈打つように聞こえる耳鳴(拍動性耳鳴)がある

特に「急な難聴を伴う耳鳴」は、突発性難聴などの可能性があるため、早急に耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

診察の結果、聴神経腫瘍や脳血管障害など、中枢性の病気が疑われる場合には、MRI検査が追加で行われることがあります。[2]

また、脈打つように聞こえる「拍動性耳鳴」は、血管の異常など、非拍動性の耳鳴とは異なる原因が関わっていることがあるため、専門的な評価が必要になる場合があります。[1]

まとめ

耳鳴は、耳や神経、脳の音の処理の変化によって起こる症状です。日常生活に支障をきたすような耳鳴は、国内で約300万人にのぼるとされています。[1]

原因はさまざまで、加齢やストレス、難聴などが関係することがあります。

治療は原因の確認と、症状を軽くするための工夫が中心です。[1]

鍼灸は、筋緊張や自律神経のバランスを整えることで、耳鳴のつらさを和らげる補助的な方法として役立つ可能性がありますが、そのエビデンスにはまだ限界があります。[3]

気になる症状が続く場合は、早めに耳鼻咽喉科へ相談することが大切です。

【脚注一覧】

[1] 一般社団法人日本聴覚医学会 耳鳴診療ガイドライン作成委員会(編)『耳鳴診療ガイドライン2019年版』金原出版, 2019.(耳鳴を、明らかな体外音源がないにもかかわらず感じる異常な音感覚と定義。有病率は人口の15〜20%、臨床的に問題となる耳鳴患者は人口の2〜3%〔約300万人〕と推計。65歳以上の高齢者の30%以上が「耳鳴による苦痛」を感じているとされる〔耳鳴そのものの有病率ではなく、苦痛を伴う耳鳴の割合である点に注意〕。重度の耳鳴はうつ・不安・不眠などの精神障害を伴いやすいと明記。難聴を伴う耳鳴に対する補聴器を用いた音響療法は、推奨度1A〔エビデンスが強く、行うことを強く推奨する〕と位置づけられている)

[2] 岩崎聡「難聴・耳鳴の診断と対応―診断―」日本耳鼻咽喉科学会会報. 2021;124(3):192-198.(臨床では非拍動性の耳鳴が多く、その多くが加齢に伴う難聴に合併してみられるとする総説。耳鳴の苦痛度評価には耳鳴苦痛度質問票〔THI〕改訂版を用いる。急性感音難聴では突発性難聴、外リンパ瘻などを疑うが、聴神経腫瘍、脳血管障害などの中枢疾患が疑われる場合にはMRIで除外する必要があると明記。全例に一律のMRI検査を求める記載ではない)

[3] Huang K, Liang S, Chen L, Grellet A. Acupuncture for tinnitus: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Acupunct Med. 2021;39(4):264-271. doi:10.1177/0964528420938380.(オンライン先行公開2020年8月10日、正式掲載2021年8月。8件のRCT・504例を対象としたメタ解析。主要評価項目であるVASスコアについては、対照群との間に統計学的有意差は認められなかった(平均差-1.81、95%信頼区間-3.69〜0.07、P=0.06)。副次評価項目であるTHIスコア(平均差-10.11、95%信頼区間-12.74〜-7.48、P<0.001)およびTSIスコア(平均差-8.36、95%信頼区間-8.87〜-7.86、P<0.001)については、鍼治療群で有意な改善が示された。含まれた試験の質が低く、サンプルサイズも小さいため、確定的な結論を出すには不十分であると結論づけている)

・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。