ばね指や腱鞘炎は、指や手を動かす腱と、その腱を包む「腱鞘」というトンネル状の組織に炎症や腫れが起こり、痛みや動かしにくさが生じる状態です。[1]

腱が腱鞘の中をスムーズに通れなくなることで、指を曲げ伸ばしするときに引っかかりや痛みが出ます。[1]

ばね指は、指を伸ばそうとしたときに「カクッ」と跳ねるように動くのが特徴です。

手や指をよく使う方に多くみられますが、妊娠・出産期、更年期、糖尿病のある方などにも起こりやすいことが知られています。[2]

なぜ起こるの?

主な原因は、手や指の使いすぎによる負担の積み重ねです。

・長時間のパソコン作業
・スマートフォンの操作
・家事や育児
・工具を使う仕事
・スポーツや楽器演奏

などで、指を繰り返し動かすことで腱や腱鞘に負担がかかります。

また、

・加齢による組織の変化
・妊娠や更年期によるホルモン変化
・糖尿病
・関節リウマチ

などが関係することもあります。[2]

炎症が続くと、腱が腫れて太くなり、腱鞘の中を通りにくくなるため、痛みや引っかかりが起こります。[1]

どんな症状が出るの?

次のような症状がみられます。

・指の付け根の痛み
・指を曲げ伸ばしすると引っかかる
・「カクッ」とばねのように動く
・朝に症状が強い
・手を使ったあとに悪化する
・腫れや押したときの痛み

症状が進むと、指が曲がったまま伸ばしにくくなることもあります。

親指、中指、薬指に起こりやすいとされています。[3]

どうやって診断するの?

診断は、症状の経過や指の動き、痛みの場所などを確認して行います。

医師は、

・どの動きで痛むか
・引っかかりがあるか
・腫れや圧痛があるか

などを診察します。

典型的な症状があれば、診察だけで診断できることも少なくありません。

必要に応じて、超音波検査などで腱や腱鞘の状態を確認し、他の病気が隠れていないかを調べることがあります。

治療の基本

治療の基本は、炎症を落ち着かせ、腱への負担を減らすことです。

まずは、

・手や指を休ませる
・負担の大きい動作を減らす
・装具やテーピングで安静を保つ

ことが勧められます。

必要に応じて、

・湿布や消炎鎮痛薬
・ストレッチやリハビリ
・腱鞘内ステロイド注射

などが行われます。

ステロイド注射は、痛みや引っかかりの改善に有効とされていますが、再発する場合もあります。[3][4]

症状が強い場合や、保存的治療で改善しない場合には、腱鞘を広げる手術が検討されることがあります。[1]

日常生活で気をつけたいこと

症状を悪化させないためには、日常生活での工夫も大切です。

・長時間同じ作業を続けない
・こまめに休憩をとる
・スマートフォンを握りすぎない
・手首や指に無理な力を入れない
・痛みが強い時期は冷やす
・回復期には温めて血流をよくする

ことなどが役立ちます。

パソコン作業では、手首が反りすぎない姿勢を意識することも大切です。

鍼灸は役立つの?

鍼灸は、ばね指や腱鞘炎に対する補助的な方法として用いられることがあります。

鍼やお灸の刺激によって、

・筋肉や腱まわりの緊張をやわらげる
・血流を促す
・痛みを感じにくくする

可能性があると考えられています。

一部の研究では、痛みや動かしにくさの改善が報告されています。[5]

ただし、研究の規模や方法にはばらつきがあり、すべての方に同じ効果が確認されているわけではありません。[5]

鍼灸だけで根本的に治すというよりも、休養や医療機関での治療を支える補助的な方法として位置づけられています。

糖尿病のある方、妊娠中の方、手術後の方などは、事前に医師や施術者へ相談することが大切です。

受診の目安

次のような場合は、医療機関への相談を検討しましょう。

・痛みや引っかかりが続いている
・日常生活に支障がある
・指が伸ばしにくい
・腫れや熱感が強い
・症状が徐々に悪化している

早めに治療を始めることで、改善しやすくなる場合があります。

まとめ

ばね指や腱鞘炎は、手や指の使いすぎなどによって、腱と腱鞘に炎症が起こる状態です。

痛みや引っかかりによって、日常生活に不便を感じることがあります。

治療では、手を休めることや生活動作の見直しが重要で、必要に応じて薬物療法や注射、手術などが行われます。[1][3]

鍼灸は、痛みや筋緊張の緩和を目的とした補助的な方法として役立つ可能性があります。[5]

症状が長引く場合や悪化している場合は、無理をせず、医療機関へ相談しましょう。

【脚注一覧】

[1] Villarreal Acha D, Zaidi Z, Mohamed A, Peters V, Wahid M, Sajjad SA, Kargel J. Clinical Review of Trigger Finger in Pediatric and Adult Patients: Evaluation and Management Strategies. Cureus. 2025;17(8):e91203.(ばね指はA1腱鞘部を中心とする屈筋腱鞘の狭窄・炎症により、疼痛・ロッキング・可動域制限を来す病態であるとする総説。反復動作、糖尿病、炎症性関節疾患との関連が強いとされる。保存的治療(NSAIDs、ステロイド注射、装具、体外衝撃波療法など)の有効率は非糖尿病患者で70〜90%と報告される一方、手術(開放術・経皮的手技・超音波ガイド下手技・内視鏡下手技)は90%を超える成功率と低い再発率を示すと報告)

[2] Frizziero A, Maffulli N, Saglietti C, Sarti E, Bigliardi D, Costantino C, Demeco A. A Practical Guide to Injection Therapy in Hand Tendinopathies: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials. J Funct Morphol Kinesiol. 2024;9(3):146.(ばね指の危険因子として、遺伝的要因、加齢、性ホルモンの影響、甲状腺機能異常などの内分泌疾患、糖尿病などの代謝性疾患、炎症性疾患などを挙げる系統的レビュー)

[3] Schubert C, Hui-Chou HG, See AP, Deune EG. Corticosteroid injection therapy for trigger finger or thumb: a retrospective review of 577 digits. Hand (N Y). 2013;8(4):439-444.(362例・577指を対象とした後ろ向き研究。ステロイド注射の有効率は79.7%と高いが、20.3%で再発がみられ、再発例での効果持続期間は平均315日と報告。女性は男性より有意に罹患しやすく、発症年齢も若い傾向(平均58.3歳 vs 62.1歳)。糖尿病患者は全体の22.1%を占めた)

[4] Baumgarten KM, Gerlach D, Boyer MI. Corticosteroid injection in diabetic patients with trigger finger: a prospective, randomized, controlled double-blinded study. J Bone Joint Surg Am. 2007;89(12):2604-2611.(非糖尿病患者ではステロイド注射がプラセボと比較して有意に有効であった一方、糖尿病患者では手術率や症状改善においてプラセボとの有意差を示さなかったとする無作為化比較試験)

[5] Inoue M, Nakajima M, Hojo T, Itoi M, Kitakoji H. Acupuncture for the treatment of trigger finger in adults: a prospective case series. Acupunct Med. 2016;34(5):392-397.(15例19指を対象に、A1腱鞘部への鍼治療を行った前向き症例集積研究。スナッピング時の痛み・重症度がVASスコアで有意に改善したと報告。ただし対照群を伴わない観察研究であり、エビデンスの質は限定的)

・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。