肩こりとは、首から肩、背中の上のほうにかけて、こわばりや重だるさ、張り感、痛みなどを感じる状態をいいます。
日本ではとても多くみられる症状で、病名というより、日常的な不調を表す言葉として使われています。[1]
年齢や性別を問わず起こりますが、特に女性に多い症状です。[1][2]
特に、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用が増えた現代では、多くの方が悩みやすい症状のひとつです。[2]
なぜ起こるの?
肩こりは、首や肩まわりの筋肉の緊張が続き、血流や神経の働きに影響することで起こると考えられています。
大きな原因のひとつは、同じ姿勢が長く続くことです。
たとえば、
・パソコン作業
・スマートフォン操作
・車の運転
などで、首や肩の筋肉に負担がかかり続けると、筋肉が硬くなりやすくなります。実際に、パソコン作業が1日3時間を超える方は、そうでない方と比べて肩こりが起こりやすいことが報告されています。[2]
そのほかにも、
・姿勢の乱れ
・運動不足
・筋力低下
・目の疲れ
・冷え
などが関係します。
さらに、
・ストレス
・精神的な緊張
・自律神経の乱れ
・睡眠不足や睡眠の質の低下
が影響することもあります。睡眠に満足できていない方は、そうでない方と比べて肩こりが起こりやすいとする報告もあります。[2]
一方で、検査をしても、はっきりした原因が見つからないことも少なくありません。[2]
どんな症状が出るの?
肩や首が、
・重い
・張っている
・こわばる
と感じることがあります。
動かしたときに、痛みや違和感が出る場合もあります。
また、肩こりに伴って、
・頭が重い感じ
・目の疲れ
・頭痛
・吐き気
・集中力の低下
などを感じる方もいます。
症状の強さや現れ方には個人差があります。
どうやって診断するの?
診断では、症状の内容や経過、生活習慣について詳しく確認します。
医師は、
・首や肩の動き
・筋肉の緊張の程度
・姿勢や作業環境
などを確認します。
多くの場合、肩こりそのものに特別な検査は必要ありません。
ただし、
・しびれ
・力の入りにくさ
・強い痛み
などを伴う場合には、ほかの病気が隠れていないか確認するため、画像検査などを行うことがあります。
治療の基本
肩こりの改善では、生活習慣の見直しがとても大切です。
まずは、長時間同じ姿勢を続けないことが基本になります。
そのほか、
・姿勢を整える
・軽い運動やストレッチを行う
・適度に休憩をとる
・首や肩を温める
・睡眠の質を整える
などが役立つことがあります。[2]
必要に応じて、
・痛み止めなどの薬
・湿布
・リハビリテーション
などが行われる場合もあります。
多くの場合、無理のないケアを続けることで、徐々に症状の改善が期待できます。
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、肩こりに対する補助的な方法として広く用いられています。
鍼やお灸による刺激で、筋肉の緊張をやわらげ、血流を促すことで、重だるさや不快感の軽減につながる可能性があります。
日本国内で行われた小規模なランダム化比較試験では、慢性的な肩こりを持つ女性オフィスワーカーを対象に、トリガーポイント(押すと痛みが響く筋肉のポイント)を狙った鍼治療を月4回まで行った結果、無治療の対照群と比べて、1か月間で痛みの強さが約20%軽減し、労働生産性の指標も改善したと報告されています。[3]
ただし、この研究の対照群は「偽の鍼治療」ではなく「無治療」であり、対象人数も20名と少数であるため、鍼治療そのものの効果なのか、施術を受けること自体による効果(プラセボ効果を含む)が影響しているのかは、この研究だけでは明確に区別できません。[3]
別の大規模な二重盲検試験(400例)では、実際に皮膚に鍼を刺す治療と、皮膚に軽く触れるだけの模擬的な治療との間で、はっきりした差が確認されなかったとも報告されています。この研究では、「鍼治療を受けるという体験」自体が、無治療と比べて症状を改善させる効果を持つ可能性が示されました。[4]
このように、研究によって結果が分かれており、鍼灸の効果のすべてが鍼そのものの作用によるものなのか、施術を受けること自体による効果も含まれるのかは、まだはっきりと結論が出ていません。[3][4]
医療機関で治療中の方は、主治医と相談しながら行うことが大切です。
受診の目安
肩こりの多くは、筋肉の疲労や生活習慣による一時的な不調です。
しかし、次のような症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
・腕や手のしびれが続く
・力が入りにくい
・首や肩の強い痛みがある
・夜間に強い痛みがある
・発熱や体重減少がある
・転倒や事故のあとから症状が出た
これらの場合、神経や骨などの病気が隠れていることがあります。[5]
また、体を動かしたときや階段を上ったときなどに、締めつけられるような胸の痛みとともに、肩や顎に痛みが広がる場合は、心臓の病気(狭心症など)が隠れている可能性があります。通常の肩こりとは異なり、労作時に一時的に強く現れることが特徴で、息切れを伴うこともあります。このような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。[5]
まとめ
肩こりは、多くの方が経験する身近な不調です。
長時間の同じ姿勢や筋肉の緊張、睡眠不足、ストレスなど、さまざまな要因が関係しています。[2]
多くの場合は、姿勢改善や運動、休息、睡眠の見直しなどによって症状の軽減が期待できます。
鍼灸は、筋肉の緊張や体のバランスを整える補助的な方法として役立つ可能性がありますが、そのエビデンスの強さについては研究によって評価が分かれています。[3][4]
症状を我慢しすぎず、必要に応じて医療機関や専門家に相談しながら、自分に合った対処法を見つけていきましょう。
【脚注一覧】
[1] 厚生労働省「国民生活基礎調査」健康票(有訴者の状況)。肩こりが日本人の代表的な自覚症状の一つであることは複数年度の調査で一貫して確認されているが、令和4年調査の具体的数値そのものは本コラム作成にあたり原資料を直接確認できていない。数値については脚注[2](Onda et al., 2022)が引用する2019年調査データを参照。
[2] Onda A, Onozato K, Kimura M. Clinical features of neck and shoulder pain (Katakori) in Japanese hospital workers. Fukushima J Med Sci. 2022;68(2):79-87. doi:10.5387/fms.2022-02.(著者所属:Department of Orthopedic Surgery / Rehabilitation, Zenshukai Hospital。2019年の国民生活基礎調査を引用し、肩こりは女性の自覚症状で最多(11.2%)、男性では腰痛に次いで2番目(5.7%)と報告。病院職員359名の横断研究では、約75%が何らかの肩こりを有し、パソコン作業時間(1日3〜6時間でオッズ比1.82、6時間超で2.48)、女性であること(オッズ比3.75)、睡眠の質への不満(オッズ比2.92)が危険因子として同定された。超音波エラストグラフィーで、強い肩こり群は僧帽筋の硬さが有意に高かった)
[3] Minakawa Y, Miyazaki S, Waki H, Akimoto Y, Itoh K. Clinical effectiveness of trigger point acupuncture on chronic neck and shoulder pain (katakori) with work productivity loss in office workers: a randomized clinical trial. J Occup Health. 2024;66(1):uiad016. doi:10.1093/joccuh/uiad016.(著者所属:帝京平成大学 鍼灸学科・東洋医学研究所ほか。4週間・単一施設のRCT。3か月以上続く肩こりを持つ女性オフィスワーカー20名を対象に、トリガーポイント鍼治療(月4回まで)群と、職場推奨のプレゼンティーイズム対策のみの無治療対照群を比較。鍼治療群で痛みの強さが対照群比で約20%軽減し、相対的プレゼンティーイズム値が0.25改善したと報告。対照群は偽鍼ではなく無治療であり、非盲検・少人数(20名)の予備的研究である点に限界がある)
[4] Takakura N, Takayama M, Kawase A, Yajima H, Kawakita K, Bracha ZT, Roseen E, Kaptchuk TJ. Acupuncture for Japanese Katakori (Chronic Neck Pain): A Randomized Placebo-Controlled Double-Blind Study. Medicina (Kaunas). 2023;59(12):2141. doi:10.3390/medicina59122141.(著者所属:Japan School of Acupuncture, Moxibustion, and Physiotherapy、Harvard Medical School ほか。400例を対象とした4群(刺入鍼、皮膚接触のみの鍼、非接触の鍼、無治療対照)二重盲検RCT。「鍼治療の儀式」を伴う3群はいずれも無治療対照より有意に肩こりを改善したが、刺入群と皮膚接触群の間には明確な有意差が見られなかった。刺入群が非接触群を上回ったのは24時間後の一時点のみであった)
[5] 心臓の病気(狭心症・心筋梗塞等)による関連痛(放散痛)が肩や顎への痛みとして現れうるとする、循環器領域における確立した臨床知見(標準的な循環器内科の教科書的知見であり、単一の一次文献ではない)。狭心症の放散痛は、通常の肩こりとは異なり、労作に伴って一過性に生じ、安静で軽快する特徴(労作性狭心症の典型像)を持つ点で臨床的に区別されることが多い。
・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。
