帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹が治ったあとも、神経の痛みが長く残る状態をいいます。
一般的には、発疹が治ってから90日以上たっても痛みが続く場合に、この名前が使われます。
痛みは、
・焼けるような痛み
・ピリピリ、チクチクする痛み
・電気が走るような痛み
・ズキズキする痛み
など、人によってさまざまです。
帯状疱疹を経験したすべての方に起こるわけではありませんが、高齢の方ほど起こりやすいことが知られています。
日本では、80歳までに3人に1人が帯状疱疹を経験するとされ、50歳代以降で増加します。[1]
なぜ起こるの?
帯状疱疹は、水ぼうそうの原因でもある「水痘・帯状疱疹ウイルス」が再び活動することで起こります。
このとき、皮膚だけでなく神経にも炎症が起こり、神経そのものが傷つくことがあります。
神経が傷つくと、皮膚の症状が治ったあとも、神経が過敏な状態になり、痛みの信号が出続けることがあります。
特に次のような場合は、帯状疱疹後神経痛が起こりやすいとされています。
・高齢の方
・帯状疱疹の痛みが強かった方
・発疹の範囲が広かった方
・治療開始が遅れた方
・糖尿病や免疫低下がある方
急性期の痛みの強さは、帯状疱疹後神経痛へ移行する危険因子のひとつとされており、急性期に痛みをしっかり抑えることが、後の神経痛の予防にもつながると考えられています。[2]
発症早期に抗ウイルス薬で治療を始めることで、帯状疱疹後神経痛のリスクを減らせる可能性があります。
抗ウイルス薬の投与によって、皮疹の治癒促進、痛みの緩和、痛みが消失するまでの期間の短縮が期待できるとされています。[1][2]
どんな症状が出るの?
主な症状は、帯状疱疹が出ていた場所に残る痛みです。
よくみられる症状には、
・焼けるような痛み
・ズキズキする痛み
・ピリピリ、チクチクする感じ
・感覚が鈍い
・触れるだけで強く痛む(アロディニア)
などがあります。
衣服が触れるだけで痛い、
風が当たるだけでつらい、
と感じる方もいます。
夜間に痛みが強くなり、
・眠れない
・疲れが取れない
・気分が落ち込む
など、生活の質に大きな影響が出ることもあります。
帯状疱疹後神経痛の患者さんの多くに、不安、気分の落ち込み、睡眠の質の低下などの心理的・身体的な問題が伴うことが報告されています。[3]
どうやって診断するの?
診断は、
・帯状疱疹の既往
・痛みが続いている期間
・痛みの性質
・日常生活への影響
などを確認して行います。
多くの場合は、症状の経過から診断できます。
ただし、
・しびれが強い
・筋力低下がある
・症状が広範囲に及ぶ
などの場合には、ほかの病気との区別のために追加検査が行われることもあります。
治療の基本
帯状疱疹後神経痛では、「神経の過敏な状態を抑えること」が治療の中心になります。
痛みの強さや体調に合わせて、いくつかの治療を組み合わせます。
薬物療法
神経障害性疼痛に使われる薬が中心になります。
・プレガバリン
・ミロガバリン
・ガバペンチン
などは、神経の興奮を抑えて痛みを軽減する目的で使われます。
国内の神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインでも、これらは第一選択薬のひとつとして位置づけられています。[4]
眠気やふらつきが出ることがあるため、少量から開始して調整します。
また、
・三環系抗うつ薬
・SNRI(デュロキセチンなど)
が使われることもあります。同ガイドラインでは、これらも第一選択薬に含まれています。[4]
これらは、痛みの感じ方を調整する働きがあります。
外用薬
局所の痛みに対して、
・リドカイン貼付剤
などが使われる場合があります。
触れるだけで痛い症状に役立つことがあります。
鎮痛薬
必要に応じて、
・アセトアミノフェン
・NSAIDs
などが併用されます。
痛みが強い場合には、
・トラマドール
などのオピオイド鎮痛薬が慎重に使われることもあります。
国内のガイドラインでは、トラマドールは第二選択薬として位置づけられています。[4]
神経ブロック
強い痛みが続く場合には、神経ブロック注射が検討されることもあります。
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、帯状疱疹後神経痛に対する補助的な方法として用いられることがあります。
期待されている作用には、
・筋緊張をやわらげる
・血流を改善する
・神経の過敏な状態を調整する
・睡眠や自律神経の状態を整える
などがあります。
一部の研究では、痛みや睡眠の改善が報告されています。
複数のランダム化比較試験をまとめた解析では、鍼治療は薬物療法単独と比較して、痛みの軽減において優れていたとする結果が示されています。[5]
ただし、研究の質や規模にはばらつきがあり、標準治療を置き換えるほどの効果が確立しているわけではありません。
含まれた研究の多くは方法論的な質が高くないと評価されており、より大規模で質の高い研究が今後必要とされています。[5]
そのため、
・医療機関での治療を基本にする
・鍼灸は補助療法として併用する
ことが大切です。
特に、
・薬だけでは痛みが十分に抑えられない方
・慢性的な緊張や不眠を伴う方
では、役立つ場合があります。
帯状疱疹ワクチンについて
近年では、帯状疱疹そのものや、帯状疱疹後神経痛を予防する目的でワクチン接種が勧められています。
特に50歳以上では、発症予防や重症化予防の効果が期待されています。
2025年度からは、原則65歳の方を対象に、帯状疱疹ワクチンの定期接種が始まっています。[1]
ワクチンには種類があり、年齢や体調によって選択が異なります。
気になる方は、医師へ相談しましょう。
受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
・帯状疱疹が治ったあとも痛みが続く
・痛みで眠れない
・日常生活に支障がある
・痛みが徐々に強くなっている
・しびれや筋力低下を伴う
また、
・発熱
・体重減少
・広い範囲の神経症状
などがある場合には、ほかの病気が隠れていないか確認が必要です。
日常生活で気をつけたいこと
神経痛は、疲労やストレスで悪化しやすいことがあります。
そのため、
・睡眠をしっかりとる
・無理をしすぎない
・体を冷やしすぎない
・刺激の少ない衣服を選ぶ
・ストレスをため込みすぎない
ことが大切です。
痛みを我慢し続ける必要はありません。
睡眠や日常生活に支障がある場合は、医療機関に相談しましょう。
まとめ
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹によって傷ついた神経が過敏な状態となり、痛みが長く続く病気です。
特に高齢の方や、帯状疱疹が重かった方では起こりやすいことが知られています。[1][2]
治療では、
・神経障害性疼痛の薬
・外用薬
・必要に応じた神経ブロック
などを組み合わせながら、痛みを和らげていきます。[4]
鍼灸は、痛みや緊張、不眠をやわらげる補助的な方法として役立つ可能性がありますが、そのエビデンスにはまだ質的な限界があります。[5]
痛みを我慢し続けず、早めに医療機関へ相談し、自分に合った治療を見つけていくことが大切です。
【脚注一覧】
[1] 帯状疱疹診療ガイドライン策定委員会(浅田秀夫、今福信一、渡辺大輔、山本剛伸、外山望、安元慎一郎ほか)『帯状疱疹診療ガイドライン2025』日本皮膚科学会, 2025.(80歳までに3人に1人が帯状疱疹を経験し、60歳を超えると発症率が急激に上昇すると記載。抗ウイルス薬投与により皮疹治癒の促進、痛みの緩和、痛みが消失するまでの期間の短縮が期待できるとする。2025年度より原則65歳を対象とした帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始されたことも記載)
[2] 日本ペインクリニック学会『ペインクリニック治療指針』改訂第5版、真興交易医書出版部(Ⅲ-A.帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の章).(急性期の痛みの強さが帯状疱疹後神経痛へ移行する危険因子であること、急性期の痛みを緩和することが帯状疱疹後神経痛への移行抑制につながることが期待されるとする記載。抗ウイルス薬投与による皮疹治癒促進・痛み緩和・痛み消失までの期間短縮についても言及)
[3] Xing XF, Zhou ZF, Zhu F, Yin JB, Wang QQ, Wang QY, Zhang T, Ren SQ, Chen T. Acupuncture for Postherpetic Neuralgia: An Evidence Mapping. J Pain Res. 2021;14:1187-1195.(帯状疱疹後神経痛の患者の半数以上に、不安、抑うつ、睡眠の質の低下などの心理的・身体的問題を伴うと報告する総説。病因はいまだ不明確であり、対症療法が中心となるが、薬剤の効果は副作用や忍容性によって限界があるとする)
[4] 日本ペインクリニック学会 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂版作成ワーキンググループ(編)『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版』真興交易医書出版部, 2016.(第一選択薬としてCa²⁺チャネルα2δリガンド(プレガバリン、ガバペンチン)、SNRI(デュロキセチン)、三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、ノルトリプチリン、イミプラミン)を位置づける薬物療法アルゴリズムを提示。第二選択薬としてワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液、トラマドール塩酸塩、第三選択薬としてトラマドール以外のオピオイド鎮痛薬を位置づける)
[5] Wang Y, Li W, Peng W, Zhou J, Liu Z. Acupuncture for postherpetic neuralgia: systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2018;97(34):e11986. doi:10.1097/MD.0000000000011986.(複数のRCTを対象としたシステマティックレビュー・メタ解析。薬物療法と比較した2件のRCTでは、鍼治療のほうがVASスコアで疼痛強度の減少が有意に優れていた(平均差1.80、95%信頼区間1.72-1.87)。ただし、含まれた研究の多くは方法論的な質が高くなく、より大規模で質の高いRCTが今後必要と結論づけている)
・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。
