月経痛とは、月経の前後や月経中に起こる下腹部の痛みや不快感のことをいいます。
特に、子宮や卵巣に明らかな病気が見つからないにもかかわらず、月経のたびに痛みが繰り返される状態を「原発性月経困難症」と呼びます。
思春期から20代の若い年代に多くみられますが、年齢を問わず起こることがあります。
月経痛は珍しいものではありませんが、強い痛みによって学校や仕事、日常生活に支障をきたす場合もあります。原発性月経困難症は、生殖年齢にある女性の月経痛の中で最も多いタイプで、生涯のどこかの時期に女性の最大4分の3が経験するとされています。[1]
なぜ起こるの?
原発性月経困難症では、「プロスタグランジン」という物質が関係していると考えられています。
プロスタグランジンは、子宮を収縮させて経血を外へ出す働きを持っています。
しかし、この物質が過剰に作られると、子宮の収縮が強くなり、痛みや血流低下を引き起こしやすくなります。[2][3]
また、
・ストレス
・睡眠不足
・過労
などが、症状を強める要因になることもあります。
どんな症状が出るの?
主な症状は、
・下腹部の痛み
・下腹部の重だるさ
です。
そのほかにも、
・腰痛
・吐き気
・頭痛
・下痢
・だるさ
・イライラ
・集中しにくさ
などを伴うことがあります。[2]
症状の強さには個人差があり、寝込んでしまうほど強い痛みが出る方もいます。痛みは通常、月経開始後24時間以内に最も強くなり、2〜3日でおさまる傾向があります。[2]
どうやって診断するの?
診断では、症状の内容や月経周期との関係を確認します。
医師は、
・いつ痛みが出るか
・どの程度の痛みか
・日常生活への影響
・月経の状態
などを詳しくうかがいます。
必要に応じて、
・超音波検査
・血液検査
などを行い、子宮内膜症や子宮筋腫など、ほかの病気が隠れていないかを調べます。
明らかな病気が見つからず、月経に伴う痛みが主な症状である場合に、原発性月経困難症と診断されます。
治療の基本
治療では、痛みを和らげ、日常生活を送りやすくすることが目的になります。
主な治療には、
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
・低用量ピルなどのホルモン療法
があります。
NSAIDsは、機能性月経困難症の女性のおよそ8割に効果があるとされる、第一選択の治療薬です。ただし、痛みを我慢してから服用すると、すでにプロスタグランジンが多く作られてしまっているため、効果が現れるまでに時間がかかります。そのため、月経痛が出始めたら、あるいはその直前から早めに服用を開始し、6〜8時間ごとに2〜3日間続けて服用することがすすめられています。[3]
また、
・体を冷やしすぎない
・十分な睡眠をとる
・適度に運動する
・ストレスをため込みすぎない
など、生活習慣を整えることも大切です。
治療内容は、症状の程度や年齢、将来の妊娠希望などを考慮して選択されます。
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、月経痛に対する補助的な方法として用いられることがあります。
鍼やお灸の刺激によって、
・骨盤まわりの血流を促す
・筋肉の緊張をやわらげる
・痛みの感じ方を調整する
などの作用が期待されています。
研究では、月経痛の軽減や、鎮痛薬の使用量減少につながった可能性が報告されています。ただし、この分野の代表的なコクランレビューでは、含まれた研究の多くに方法論的な限界があり、鍼治療が偽の鍼治療(プラセボ)と比較して痛みを軽減するかどうかについて、確かな結論を出すには証拠が不十分であると結論づけられています。一方で、鍼治療を全く行わない場合と比較すると、痛みの軽減効果を示した研究があります。[4]
特に、
・ストレスの影響を受けやすい方
・慢性的な疲労を伴う方
などでは、全身の状態を整える目的で行われることがあります。
ただし、鍼灸だけで根本的に治るとは限りません。研究の質はまだ十分に高くなく、より質の高い研究が必要とされています。[4]
婦人科での診察や標準的な治療を基本としながら、補助的に取り入れることが大切です。
受診の目安
次のような場合は、婦人科の受診を検討しましょう。
・年々痛みが強くなっている
・鎮痛薬が効きにくい
・月経以外の時期にも痛みがある
・出血量が非常に多い
・学校や仕事に行けないほどつらい
・急に症状が変化した
これらの場合は、子宮内膜症や子宮筋腫など、別の病気が関係していることがあります。
日常生活で気をつけたいこと
・体を冷やしすぎない
・無理をしすぎない
・適度な運動を取り入れる
・十分な睡眠をとる
・栄養バランスを意識する
・ストレスをため込みすぎない
生活リズムを整えることが、症状の軽減につながる場合があります。
まとめ
原発性月経困難症は、月経に伴って下腹部痛などが繰り返し起こる状態です。
多くの方にみられる症状ですが、強い痛みを我慢し続ける必要はありません。[1]
治療では、鎮痛薬(早めの服用が重要)やホルモン療法、生活習慣の見直しなどを組み合わせながら、症状の改善を目指します。[3]
鍼灸は、痛みや体の緊張を和らげる補助的な方法として役立つ可能性がありますが、そのエビデンスの質にはまだ限界があります。[4]
つらい症状が続く場合は、一人で抱え込まず、婦人科や専門家へ相談することが大切です。
【脚注一覧】
[1] Bettendorf B, Shay S, Tu F. Dysmenorrhea: contemporary perspectives. Obstet Gynecol Surv. 2008;63(9):597-603.(原発性月経困難症は生殖年齢女性における月経痛として最も頻度が高く、女性の生涯のいずれかの時期に最大4分の3が経験するとされる代表的な疫学総説)
[2] MSDマニュアル プロフェッショナル版「月経困難症」(日本語版)2024年3月改訂.(機能性月経困難症の病態として、分泌期の子宮内膜で産生されるプロスタグランジンF2α等の炎症性メディエーターが子宮収縮と虚血を引き起こすと解説。頭痛・悪心・便秘または下痢・腰痛・頻尿等の随伴症状、痛みが月経開始後24時間で最大となり2〜3日で軽減する経過について記載)
[3] 日本産婦人科医会「産婦人科ゼミナール No.109/月経困難症」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 監修)/『産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023』日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編集・監修, 2023年8月発行.(NSAIDsは機能性月経困難症の女性の約80%に有効な第一選択薬であり、プロスタグランジン合成酵素阻害薬として作用する。痛みを我慢したあとの服用では効果発現が遅れるため、月経痛開始時またはその直前からの早期服用を6〜8時間ごとに2〜3日間続けることが、日本の臨床現場での標準的な服薬指導として推奨されている)
[4] Smith CA, Armour M, Zhu X, Li X, Lu ZY, Song J. Acupuncture for dysmenorrhoea. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4(4):CD007854. doi:10.1002/14651858.CD007854.pub3.(原発性月経困難症に対する鍼治療・鍼圧療法の有効性・安全性を検証した代表的なコクランレビュー。偽鍼との比較では確実な結論を出すにはエビデンスが不十分。無治療との比較では痛みの軽減が報告されている。全体として研究の質は低く、より大規模で質の高いRCTが必要と結論)
・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。
