眼精疲労とは、目を使う作業を続けたあとに、目の疲れや不快感が強くあらわれ、休息をとっても十分に回復しにくい状態をいいます。
単なる「疲れ目」とは異なり、症状が慢性的に続いたり、繰り返したりすることが特徴です。
目の症状だけでなく、
・頭痛
・首や肩のこり
・吐き気
・集中力の低下
・全身のだるさ
などを伴うこともあり、仕事や日常生活に影響する場合があります。
なお、眼精疲労は特定の病名というより、さまざまな原因による目の症状をまとめた呼び方です。
近年、パソコンやスマートフォンの画面を見続けることによる症状は、「コンピュータ視覚症候群(CVS)」や「デジタル眼精疲労」とも呼ばれ、広く研究が進められています。[1]
なぜ起こるの?
眼精疲労は、目のピント調節機能に負担がかかり続けることが一因です。
特に、
・パソコンやスマートフォンを長時間見る
・細かい文字を見続ける
・画面との距離が近い
・休憩をとらずに作業する
といった状況が大きく関係します。1日3時間を超えてパソコン画面を見る方の約90%が、何らかの症状を感じているとする報告もあります。[1]
また、
・近視、遠視、乱視、老眼などの屈折異常
・合っていない眼鏡やコンタクトレンズ
・ドライアイ
・まばたきの減少
・睡眠不足
・ストレスや疲労
なども症状を悪化させる要因になります。[1]
さらに、まれではありますが、
・緑内障
・白内障
・斜視
・神経の病気
などが背景に隠れている場合もあります。
どんな症状が出るの?
主な症状として、
・目の重だるさ
・目の痛み
・しょぼしょぼする感じ
・かすみ目
・ピントが合いにくい
・目の乾き
・充血
などがあります。[1]
さらに、
・頭痛
・肩こり
・首の張り
・吐き気
・集中力の低下
・全身の疲労感
など、全身症状があらわれることもあります。[1]
症状の程度や現れ方には個人差があります。
どうやって診断するの?
診断では、症状の内容や続いている期間、日常の作業環境などを詳しく確認します。
また必要に応じて、視力検査や屈折検査、眼圧検査、眼底検査などを行い、視力の問題や目の病気が隠れていないかを確認します。
また、
・ドライアイの検査
・眼鏡やコンタクトレンズの度数確認
なども行われることがあります。[1]
症状や検査結果から、目の病気や視力・屈折の問題などを確認したうえで、目の使い方や作業環境などとの関連が考えられる場合に、眼精疲労として対処します。
治療の基本
治療では、目への負担を減らすことが基本になります。
具体的には、
・長時間作業を続けず、こまめに休憩をとる
・画面との距離を適切に保つ
・照明や画面の明るさを調整する
・意識してまばたきを増やす
・十分な睡眠をとる
といった生活習慣の見直しが大切です。[1]
休憩の目安として、「20分ごとに、20フィート(約6メートル)先を20秒見る」という「20-20-20ルール」が広く紹介されています。ただし、この方法の効果を裏付ける質の高い研究はまだ十分ではなく、有効性は確立していません。それでも、こまめに画面から目を離し、遠くを見る習慣自体は、目の負担を減らすうえで妥当な工夫と考えられます。[2]
近視や老眼などがある場合は、適切な眼鏡やコンタクトレンズへの調整が役立ちます。
ドライアイがある場合には、点眼薬などによる治療が行われます。
症状によっては、
・目の疲れを和らげる点眼薬
・ビタミン剤などの内服薬
が使われることもあります。
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、眼精疲労に対する補助的な方法として用いられることがあります。
鍼やお灸によって、
・首や肩まわりの筋肉の緊張を和らげる
・血流を改善する
・自律神経のバランスを整える
ことで、目の疲れや頭痛、肩こりの軽減につながる可能性があると考えられています。
特に、眼精疲労に伴いやすい「ドライアイ」については、鍼治療によって涙の量や涙液層の安定性(目の表面の潤いの持続しやすさ)が改善したとする研究報告があります。[3]
ただし、これは主に涙の量など客観的な検査値についての結果であり、対象となった試験の方法論的な質も全般的に高くありません。「目の疲れがつらい」といった自覚症状そのものへの効果については、まだ十分な根拠が確立していないとされています。[3]
鍼灸だけで目の病気を治療できるわけではありません。
特に、
・視力低下
・強い痛み
・視野の異常
などがある場合は、まず眼科での診察が優先されます。
医療機関での治療や生活習慣の改善とあわせて、無理のない範囲で取り入れることが大切です。
受診の目安
目の疲れが長く続き、休んでも改善しない場合は、眼科への相談をおすすめします。
特に、次のような症状がある場合は、早めの受診が必要です。
・急に視力が低下した
・視野が欠ける、ゆがんで見える
・強い目の痛みがある
・強い頭痛や吐き気を伴う
・片目だけに強い症状がある
・光がまぶしく感じる
・目が赤く強く充血している
これらは、別の目の病気が隠れている可能性があります。
まとめ
眼精疲労は、目の使いすぎやピント調節への負担によって起こる、身近な不調です。
目の症状だけでなく、頭痛や肩こり、全身の疲労感につながることもあります。[1]
治療の基本は、目を休ませ、作業環境や生活習慣を見直すことです。
鍼灸は、首や肩の緊張、自律神経のバランスを整えることで、症状の軽減を助ける可能性がありますが、そのエビデンスは限定的です。[3]
症状が長く続く場合や、視力低下などを伴う場合は、我慢せず、早めに眼科へ相談しましょう。
【脚注一覧】
[1] Pavel IA, Bogdanici CM, Donica VC, Anton N, Savu B, Chiriac CP, Pavel CD, Salavastru SC. Computer Vision Syndrome: An Ophthalmic Pathology of the Modern Era. Medicina (Kaunas). 2023;59(2):412. doi:10.3390/medicina59020412.(デジタル画面の長時間使用による眼精疲労(asthenopia)、視覚障害、眼精疲労に伴う頭痛・頸部痛・肩こりなどの筋骨格系症状を含む「コンピュータ視覚症候群(CVS)/デジタル眼精疲労」に関する総説。VDTユーザーにおける眼精疲労の有病率は55〜81%と報告され、1日3時間超のパソコン使用者の約90%が何らかの症状を有するとする2021年の報告を引用。屈折異常、不適切な眼鏡・コンタクトレンズ、ドライアイ、まばたき減少、環境因子(低湿度・高温)などが症状を悪化させる要因として整理されている)
[2] Balasubramanian S, Reddy A, Nguyen VT, et al. 20-20-20 Rule: Are These Numbers Justified? Ophthalmic Physiol Opt. 2023;43(3):516-524.(PMID: 36473088)(若年成人30名を対象に、40分間のタブレット読書課題中に20秒の定期休憩を導入する介入試験を実施。結果、20秒間の計画的休憩がデジタル眼精疲労の軽減に有効であることを支持するデータは得られなかった。著者らは、広く提唱されている「20-20-20ルール」自体、これまで査読を経た十分なエビデンスに基づいていないと指摘している)
[3]Jiang HR, Liu SJ, Liu P, Xu SW, Yang Y, Zhang KY, Shou Y, Zhang BM. Acupuncture for dry eye syndrome: a meta-analysis of randomized controlled trials. J Acupunct Tuina Sci. 2017;15(4):263-269. doi:10.1007/s11726-017-1011-1.(8件のRCT・619例を対象としたメタ解析。鍼治療は人工涙液等の対照treatmentと比較して、涙液層破壊時間(BUT)(平均差1.33、95%CI 1.01-1.66)とシルマー試験の値(平均差1.73mm、95%CI 1.28-2.18)を有意に改善した。ただし、含まれた研究の方法論的な質は全般的に低く、主観的症状(自覚症状スコア)に対する効果については十分なエビデンスが得られなかったと結論づけられている)
・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。
