おしり(臀部)の痛みは、日常生活の中で比較的よくみられる症状です。
原因として多いのは、筋肉や腱の使いすぎ、姿勢のくせ、長時間の座位、運動による負担など、比較的よくある体のトラブルです。
このような場合は、無理のない範囲で体を動かしたり、姿勢や生活習慣を見直したりすることで、数日から数週間で自然に軽快することがあります。
一方で、骨や関節の変形、神経の圧迫、感染症、骨折、腫瘍などが原因となっている場合は、自然に改善しにくいことがあります。
そのため、「様子をみてもよい痛み」なのか、「早めに受診が必要な痛み」なのかを見極めることが大切です。
おしりの周囲には、骨盤、股関節、多くの筋肉、そして腰から足へ伸びる坐骨神経など、重要な組織が集まっています。
そのため、原因がひとつではなく、複数の要因が重なって痛みが起こることも少なくありません。
代表的な原因
筋肉や腱が原因の痛み
最も多いタイプです。
長時間の座り仕事、急な運動、片側だけで荷物を持つ習慣、冷え、強い筋肉の緊張などがきっかけになります。
おしりの筋肉である、
・大殿筋
・中殿筋
・梨状筋
などが硬くなり、血流低下や小さな損傷が重なることで、炎症や痛みが起こります。
立ち上がるときや動き始めに痛みが出やすく、重だるさを感じることが特徴です。
休むとやや楽になることが多く、比較的自然に改善しやすいタイプです。
坐骨神経が刺激される痛み(坐骨神経痛)
坐骨神経は、腰から足先まで伸びる太い神経です。
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、梨状筋症候群などによって神経が刺激されると、坐骨神経痛が起こることがあります。
主な症状は、
・おしりから太もも、ふくらはぎに広がる痛み
・ビリビリしたしびれ
・電気が走るような感覚
などです。
前かがみ、くしゃみ、長時間座る姿勢で悪化しやすい傾向があります。
しびれが強い場合や、足に力が入りにくい場合は、医療機関での確認が必要です。
骨盤の関節(仙腸関節)が原因の痛み
骨盤の後ろ側にある仙腸関節の不調でも、おしりに痛みが出ることがあります。
片側の奥深い場所に痛みを感じることが多く、
・立ち上がるとき
・階段の上り下り
・寝返り
などで痛みが強くなることがあります。
妊娠・出産、育児、スポーツ、重い物を持つ動作などがきっかけになることがあります。
股関節や周囲の炎症
変形性股関節症や滑液包炎などが関係する場合があります。
横向きで寝たときや、歩き始め、長く歩いたときにつらくなることがあります。
皮膚や皮下組織のトラブル
打撲やあざ、できものなどでも痛みが出ます。
また、帯状疱疹では、皮膚症状が出る前に痛みだけが現れることもあります。
まれですが注意が必要な原因
頻度は高くありませんが、
・感染症
・骨折
・腫瘍
・血栓
などが原因となる場合があります。
特に血栓では、片側の腫れや熱感を伴うことが多く、通常の筋肉痛とは異なる経過をたどります。
早めに受診したほうがよい症状
次のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
・足に力が入りにくい
・徐々に筋力が低下している
・尿や便が出にくい、または漏れてしまう
・安静にしていても激しい痛みがある
・夜も眠れないほど痛い
・発熱や悪寒がある
・赤く腫れて熱を持っている
・しびれが足全体に広がっている
・急な体重減少がある
・がん治療中である
・転倒や事故のあとから痛みが出た
・2〜3週間以上改善しない
・徐々に悪化している
重大な病気が隠れていないことを確認するだけでも安心につながります。
危険なサインがない場合のセルフケア
危険な症状がない場合には、次のようなセルフケアが役立つことがあります。
・痛みのない範囲で体を動かす
・30〜40分ごとに立ち上がる
・入浴などで温める
・荷物を片側だけで持たない
・長時間同じ姿勢を避ける
ただし、強い腫れや熱感がある場合は、温めず短時間の冷却がすすめられることもあります。
過度に安静にしすぎると、筋力低下や血流悪化によって、かえって回復が遅れる場合があります。
鍼灸は役立つの?
鍼灸では、緊張した筋肉や痛みの原因となっている部位に、鍼やお灸で刺激を行います。
これにより、筋肉の緊張を和らげ、血流や神経の働きを整えることで、体が回復しやすい状態を目指します。
その結果として、
・おしりや腰の重だるさの軽減
・筋肉のこわばりの改善
・坐骨神経によるピリピリ感の緩和
などが期待されます。
慢性的な腰痛や坐骨神経痛に対して、一定の症状改善がみられたという研究報告もあります。
ただし、効果には個人差があり、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。
また、感染症や骨折など、原因によっては鍼灸が適さない場合もあります。
妊娠中の方、出血しやすい方、抗凝固薬を服用している方、強いしびれや発熱がある方は、事前に医療機関へ相談しましょう。
まとめ
おしり(臀部)の痛みは、筋肉、関節、神経など、さまざまな原因によって起こります。
多くは筋肉や姿勢の問題によるものですが、中には早めの診察が必要な病気が隠れていることもあります。
危険なサインがある場合は、無理をせず医療機関を受診しましょう。
それ以外の場合は、姿勢や生活習慣を整えながら、運動やセルフケア、鍼灸などを組み合わせることで、痛みの軽減や再発予防につながる可能性があります。
強い痛みやしびれが続く場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。
