線維筋痛症は、全身の広い範囲に慢性的な痛みが続く病気です。
検査で強い炎症や関節の破壊が見つからないにもかかわらず、強い痛みや疲労感、睡眠の不調などが長く続くことが特徴です。
日本では中高年の女性に多いとされていますが、男性や若い方にもみられます。
近年は、単なる「筋肉の病気」ではなく、脳や神経の「痛みを感じる仕組み」の変化が関係する病気と考えられています。
なぜ起こるの?
はっきりした原因は、まだ完全には分かっていません。
現在では、脳や神経が痛みに過敏になり、通常なら強い痛みとして感じない刺激まで、強く痛いと認識してしまう状態が関係していると考えられています。
これを「中枢性感作」と呼びます。
次のようなことが、発症や悪化のきっかけになる場合があります。
・強いストレス
・睡眠不足や睡眠障害
・過労
・感染症
・けがや事故
・手術
・精神的ショック
・慢性的な不安や緊張
また、うつ症状や不安症状、過敏性腸症候群、片頭痛などを合併することも少なくありません。
どんな症状が出るの?
代表的な症状は、全身に広がる慢性的な痛みです。
痛みの場所は日によって変わることもあります。
・首、肩、背中、腰、腕、脚
など、体のあちこちに症状が出ます。
痛み方もさまざまで、
・ズキズキする
・締めつけられる
・焼けるような感じ
・ピリピリする
・重だるい
などと表現されます。
痛み以外にも、
・強い疲労感
・朝起きても疲れが取れない
・眠りが浅い
・頭痛
・しびれ感
・集中しにくい
・記憶力の低下
・気分の落ち込み
・不安感
などを伴うことがあります。
天候や気圧、ストレス、睡眠不足などで悪化する方もいます。
どうやって診断するの?
線維筋痛症は、症状や経過を丁寧に確認しながら診断します。
現在は、全身の痛みの広がりや症状の程度を総合的に評価する方法が用いられています。
診断では、
・どこが痛むか
・どれくらい続いているか
・疲労感や睡眠障害の有無
・日常生活への影響
などを確認します。
また、
・血液検査
・レントゲン
・MRI
などを行い、
・関節リウマチ
・膠原病
・甲状腺疾患
・神経疾患
など、他の病気が隠れていないかを調べます。
「検査で異常が少ない=気のせい」というわけではありません。
実際に強い症状があり、生活に大きな影響を及ぼす病気です。
治療の基本
線維筋痛症では、「完全に痛みをゼロにする」ことだけを目標にするのではなく、症状を和らげ、生活の質を改善することを大切にします。
治療は一つだけではなく、複数を組み合わせて行います。
薬物療法
症状に応じて、
・神経の痛みを抑える薬
・抗うつ薬
・睡眠を整える薬
などが使われます。
痛み止めだけでは十分な効果が出にくい場合もあります。
運動療法
軽い有酸素運動やストレッチは、症状改善に役立つ可能性があります。
特に、
・ウォーキング
・水中運動
・軽い筋力トレーニング
などが勧められることがあります。
ただし、急に無理をすると悪化することがあるため、「少しずつ」が大切です。
睡眠や生活習慣の改善
睡眠不足は症状悪化に大きく関係します。
・睡眠リズムを整える
・過労を避ける
・ストレスをため込みすぎない
ことも重要です。
心理的サポート
慢性的な痛みは、不安や気分の落ち込みにつながることがあります。
必要に応じて、
・認知行動療法
・カウンセリング
などが役立つ場合があります。
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、線維筋痛症に対する補助療法の一つとして用いられることがあります。
研究では、
・痛み
・疲労感
・睡眠の質
・生活の質
などが、一部の患者さんで改善した可能性が報告されています。
考えられている作用としては、
・筋肉の緊張を和らげる
・血流を改善する
・自律神経のバランスを整える
・リラックスを促す
・痛みの感じ方を調整する
などがあります。
特に、
・肩こりや筋緊張が強い
・睡眠障害を伴う
・ストレスで悪化しやすい
といった方で、症状緩和につながる場合があります。
ただし、鍼灸だけで線維筋痛症を根本的に治すことは難しく、標準治療の代わりになるものではありません。
医療機関での治療と併用しながら、無理のない範囲で続けることが大切です。
受診の目安
次のような場合は、医療機関への相談をおすすめします。
・全身の痛みが3か月以上続いている
・疲労感が強く、日常生活がつらい
・眠れない状態が続く
・仕事や家事に支障が出ている
・検査では異常がないのに痛みが続く
・気分の落ち込みや不安が強い
また、
・発熱
・急激な体重減少
・筋力低下
・関節の強い腫れ
などがある場合は、他の病気の可能性もあるため、早めの受診が必要です。
日常生活で気をつけたいこと
線維筋痛症では、無理をしすぎない生活が大切です。
・頑張りすぎない
・疲れをため込みすぎない
・適度に体を動かす
・睡眠時間を確保する
・体を冷やしすぎない
・ストレスをため込みすぎない
ことを意識しましょう。
「調子の良い日に無理をして、その後に悪化する」ということも少なくありません。
症状の波を見ながら、少しずつ体調を整えていくことが大切です。
まとめ
線維筋痛症は、脳や神経の痛みの感じ方の変化が関係すると考えられている慢性疼痛の病気です。
痛みだけでなく、疲労感や睡眠障害、気分の不調など、さまざまな症状を伴うことがあります。
治療では、
・薬物療法
・運動療法
・生活改善
・心理的サポート
などを組み合わせながら、生活の質を高めていくことが重要です。
鍼灸は、筋緊張の緩和や自律神経への働きかけを通じて、症状を和らげる補助的な方法として役立つ場合があります。
つらい症状を一人で抱え込まず、医師や鍼灸師と相談しながら、自分に合った方法を見つけていくことが大切です。
