こむら返りとは、主にふくらはぎの筋肉が突然強く収縮し、激しい痛みが起こる状態をいいます。
筋肉が硬く盛り上がり、動かしにくくなることがあります。
多くは数秒から数分ほどで自然におさまりますが、そのあともしばらく違和感や軽い痛みが残ることがあります。
夜間や明け方、寝ているときに起こりやすく、多くの方が経験する身近な症状です。
成人の最大60%が経験するとされ、また、月5回を超える夜間のこむら返りが成人の6%にみられたとの報告もあります。[1][2]
なぜ起こるの?
こむら返りは、筋肉を動かす神経や筋肉そのものが過剰に興奮することで起こると考えられています。
正確な発生の仕組みはまだ完全には解明されていませんが、電解質の異常そのものよりも、筋肉の疲労や神経の機能異常が関与している可能性が高いとされています。[1]
要因として、
・水分不足
・汗による電解質の不足
・筋肉疲労
・血流の低下
・冷え
・長時間同じ姿勢を続けること
などが関係すると考えられています。
また、
・高齢
・妊娠中
・運動量が多い場合
にも起こりやすくなります。妊娠中の方では、30〜80%と非常に高い頻度でこむら返りを経験するとの報告があります。[3]
そのほか、
・糖尿病
・腎臓病
・肝臓病
・神経の病気
・血流障害
などの病気や、
・利尿薬
・一部の降圧薬
・脂質異常症の薬
など、薬の影響が背景にあることもあります。血液透析を受けている方や、肝硬変のある方では、特にこむら返りが起こりやすいことが知られています。[4]
どんな症状が出るの?
主な症状は、
・ふくらはぎの突然の強い痛み
・筋肉がつる感じ
・筋肉が硬く盛り上がる
・足を動かしにくい
などです。
ふくらはぎ以外にも、
・足の裏
・太もも
・足の指
などに起こることがあります。
発作のあとに、
・筋肉痛のような違和感
・軽いだるさ
が残ることもあります。
どうやって診断するの?
診断では、
・いつ起こるか
・どのくらいの頻度か
・運動や水分との関係
・持病や服用中の薬
などを確認します。
繰り返し起こる場合や、しびれ、筋力低下などを伴う場合には、
・血液検査
・神経や血流の検査
などを行い、背景に病気がないかを調べます。
多くの場合、詳しい問診と診察だけで診断は可能であり、特別な検査が必ずしも必要というわけではありません。[1]
治療の基本
発作が起きたときは、無理のない範囲で筋肉をゆっくり伸ばすことが基本です。
ふくらはぎの場合は、足首をゆっくり反らせると改善しやすいことがあります。
予防としては、
・こまめな水分補給
・適度な塩分や電解質を必要に応じて補給
・就寝前のストレッチ
・冷え対策
・適度な運動
などが良いです。
症状が頻繁に起こる場合には、医師の判断で薬物療法を行うことがあります。
漢方薬では、芍薬甘草湯 が使われることがあります。
これは、筋肉の急激な収縮をやわらげる目的で処方されます。
「国内の複数の臨床研究で、こむら返りに対する有効率は60〜100%と高く報告されており、症状が出たとき、またはつりそうな予感があるときに頓服で使うことが基本とされています。[5]」
ただし、副作用や飲み合わせの問題があるため、自己判断で長期間使用せず、医師や薬剤師に相談することが大切です。
芍薬甘草湯は、含まれる甘草の量が漢方エキス製剤の中でも多く、長期間・大量に使い続けると、むくみや血圧上昇を伴う「偽性アルドステロン症」という副作用のリスクが高まることが知られています。[5]
鍼灸は役立つの?
鍼灸は、筋肉の緊張をやわらげたり、血流を改善したりすることで、こむら返りが起こりにくい状態づくりを助ける可能性があります。
研究では、
・夜間のこむら返りの回数が減った
・痛みが軽くなった
・睡眠の質が改善した
といった報告もあります。
例えば、人工透析を受けている方を対象とした臨床試験では、鍼治療を行った群で、本物に似せた偽の鍼治療を行った群と比べて、痛みの強さとこむら返りの頻度が有意に改善したと報告されています。[6]
特に、
・冷えが強い方
・疲労がたまりやすい方
・慢性的に繰り返す方
では、症状緩和につながる可能性があります。
ただし、すべての方に同じ効果があるとは限りません。
こむら返り全般に対する鍼治療の効果を検証した、質の高い大規模な研究はまだ少なく、現時点では特定の背景疾患(透析、肝硬変など)を持つ方を対象とした小規模な研究が中心である点に留意が必要です。[6]
また、糖尿病や神経疾患、血流障害などが原因の場合は、まず医療機関で原因を確認することが重要です。
受診の目安
次のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
・頻繁に繰り返し起こる
・日常生活や睡眠に支障がある
・しびれや筋力低下を伴う
・足が冷たい、色が悪い
・歩くと痛くなり、休むと改善する
・糖尿病や腎臓病などの持病がある
・急に症状が増えた
血流障害や神経の病気など、別の病気が隠れていることがあります。
日常生活で気をつけたいこと
・寝る前に軽くストレッチをする
・水分不足を避ける
・汗をかいたときは電解質も補う
・冷房で冷やしすぎない
・長時間同じ姿勢を避ける
・急な激しい運動を控える
・疲労をためすぎない
日頃から筋肉をやわらかく保つことが予防につながります。
まとめ
こむら返りは、ふくらはぎなどの筋肉が突然けいれんし、強い痛みを起こす症状です。成人の過半数が経験する、非常に身近な症状です。[1][2]
多くは一時的ですが、繰り返す場合には、水分不足や筋肉疲労だけでなく、病気が関係していることもあります。
生活習慣の見直しやストレッチ、必要に応じた薬物療法によって改善が期待できます。[5]
鍼灸は、筋肉の緊張や血流を整える補助的な方法として役立つ場合がありますが、そのエビデンスはまだ限られた範囲にとどまっています。[6]
症状が続く場合や気になる症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
【脚注一覧】
[1] Allen RE, Kirby KA. Nocturnal leg cramps. Am Fam Physician. 2012;86(4):350-355.(成人の最大60%が夜間のこむら返りを経験すると報告。正確な機序は不明だが、電解質異常よりも筋肉疲労と神経機能異常が原因である可能性が高いとする総説。病歴聴取と診察だけで、他の疾患との鑑別に通常は十分であり、確定診断のための臨床検査や特殊検査は通常不要と明記)
[2] Grandner MA, Winkelman JW. Nocturnal leg cramps: prevalence and associations with demographics, sleep disturbance symptoms, medical conditions, and cardiometabolic risk factors. PLoS One. 2017;12(6):e0178465.(米国の代表的サンプルを用いた大規模研究。月5回超のこむら返りが成人の6%にみられ、年齢、睡眠障害、関節炎、うつ症状などと関連していたと報告)
[3] MedLink Neurology: Sleep-related leg cramps.(妊娠中の女性の30〜81%がこむら返りを経験するとされる。マグネシウム投与は妊娠中でも安全とされる一方、キニーネは妊娠中の使用が避けられるべきとされる)
[4] Chatrath H, Liangpunsakul S, Ghabril M, Otte J, Chalasani N, Vuppalanchi R. Prevalence and morbidity associated with muscle cramps in patients with cirrhosis. Am J Med. 2012;125(10):1019-1025.(肝硬変患者における筋けいれんの高い有病率と、生活の質への影響を報告)
Nocturnal Leg Cramps. Am Fam Physician. 2012;86(4):350-355.(血管疾患、腰部脊柱管狭窄症、肝硬変、血液透析などがこむら返りと関連する病態として整理されている)
[5] 日本プライマリ・ケア連合学会「漢方薬が効きません…②-こむら返りに芍薬甘草湯-」プライマリ・ケア診療各論.(こむら返りに対する芍薬甘草湯の有効性は60〜100%と報告。甘草の1日使用量が1g・2g・4g・6gの場合、それぞれ1.0%・1.7%・3.3%・11.1%の頻度で偽性アルドステロン症が用量依存的に増加すると報告。芍薬甘草湯エキス3包分3(甘草6.0g/日相当)の長期処方は推奨されず、頓用を原則とすべきとされる)
[6] Jahromi LSM, Vejdanpak M, Ghaderpanah R, Sadrian SH, Dabbaghmanesh A, Roshanzamir S, Dabbaghmanesh M. Efficacy of Acupuncture on Pain Severity and Frequency of Calf Cramps in Dialysis Patients: a Randomized Clinical Trial. J Acupunct Meridian Stud. 2024;17(2):47-54. doi:10.51507/j.jams.2024.17.2.47.(人工透析患者50名を対象としたRCT。鍼治療+通常管理群(鎮痛薬・ストレッチ等)と、偽鍼+通常管理群を比較。1か月後、鍼治療群でのみ痛み・こむら返りの頻度が有意に改善し(P<0.001)、両群間の比較でも鍼治療群が有意に優れていた(P<0.0001))
・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。
