ぎっくり腰は、突然強い腰の痛みが起こる状態の総称で、医学的には「急性腰痛」と呼ばれます。[1]

重い物を持ち上げたとき、体をひねったとき、立ち上がった瞬間、くしゃみをしたときなどをきっかけに発症することが多く、痛みの強さによっては動くことが難しくなることもあります。

腰痛は非常に身近な症状で、生涯で多くの方が一度は経験するといわれています。[2]

多くの場合は、数日から数週間で徐々に改善しますが[3]、痛みの強い時期には仕事や日常生活に大きな影響が出ることがあります。

なぜ起こるの?

ぎっくり腰は、ひとつの原因だけで起こるわけではありません。

主に、
・筋肉や靱帯への急な負担
・腰まわりの筋肉の疲労や緊張
・長時間の同じ姿勢
・姿勢や動作のクセ
・運動不足
・冷えや睡眠不足
・ストレス
など、複数の要因が重なって起こると考えられています。

実際には、レントゲンなどの検査で明らかな異常が見つからないことも多く、「筋肉や関節まわりの急性の炎症や緊張」が関係しているケースが少なくありません。[4]

一方で、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など、神経が関わる病気が背景にある場合もあります。

どんな症状が出るの?

主な症状は、突然起こる強い腰の痛みです。

・動き始めに強く痛む
・前かがみや立ち上がりで痛む
・腰が伸ばしにくい
・寝返りがつらい
・歩くと痛みが響く
などがみられます。

痛みの程度には個人差があり、
「違和感程度」の場合もあれば、
「動けないほど強い痛み」が出ることもあります。

神経が関係している場合には、
・おしりや足のしびれ
・足に力が入りにくい
などを伴うことがあります。

どうやって診断するの?

診断では、痛みの出方やきっかけ、症状の広がりを確認します。

医師は、
・腰の動き
・痛みの場所
・神経症状の有無
などを診察します。

多くの場合、典型的なぎっくり腰では特別な検査を必要としません。[4]

ただし、
・しびれが強い
・筋力低下がある
・発熱を伴う
・転倒や事故のあと
などの場合には、レントゲンやMRIなどの検査を行い、骨折や神経の病気などがないかを確認します。

早めの受診が必要な症状

次のような症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

・発熱を伴う
・安静にしていても強く痛む
・足の強いしびれや脱力
・排尿や排便がしにくい
・がん、感染症、骨粗しょう症の治療歴がある
・転倒や事故のあとから痛みが出た
・痛みが徐々に悪化している

これらは、重い病気が隠れている可能性があります。[5]

治療の基本

治療の基本は、痛みを和らげながら、少しずつ日常動作に戻していくことです。

急性期には、
・無理をしない
・楽な姿勢をとる
・必要に応じて鎮痛薬を使う
などが行われます。

以前は「安静第一」と考えられていましたが、現在では、長期間動かないことが回復を遅らせる場合があると分かっています。[6]

強い痛みが落ち着いてきたら、
・軽い歩行
・ストレッチ
・体幹トレーニング
などを無理のない範囲で行うことが、再発予防にもつながります。[6][5]

鍼灸は役立つの?

鍼灸は、ぎっくり腰に対する補助的な方法として用いられることがあります。

鍼やお灸によって、
・筋肉の緊張を和らげる
・血流を促す
・痛みに関わる神経の興奮を調整する
などが期待されています。

研究では、急性腰痛に対して、鍼治療が痛みの軽減や動きやすさの改善に役立つ可能性が報告されています。[7]

特に、
・筋肉の強いこわばり
・動作時の痛み
・慢性的な腰の緊張
がある方では、症状緩和の助けになる場合があります。

ただし、骨折や感染症など重い病気が疑われる場合には、まず医療機関での診察が優先されます。[5]

妊娠中の方、抗凝固薬を服用中の方、持病のある方は、事前に医師や鍼灸師へ相談しましょう。

ご自身でできるケア

・痛みが強い最初の1〜2日は無理をしない
・長時間同じ姿勢を避ける
・痛みの範囲で少しずつ動く[6]
・温めて楽になる場合は入浴などを活用する
・コルセットは短期間にとどめる[8]
・回復後は運動習慣を見直す

完全に動かずにいるよりも、痛みを悪化させない範囲で体を動かすことが、回復につながることがあります。[6]

まとめ

ぎっくり腰は、突然強い痛みが起こる身近な症状です。

多くは筋肉や関節まわりの急性のトラブルであり、適切なケアによって徐々に改善していきます。

治療では、無理のない範囲で体を動かしながら、痛みを和らげ、再発を防ぐことが大切です。

鍼灸は、筋肉の緊張や痛みの軽減を助ける補助的な方法として役立つ可能性があります。

しびれや脱力、発熱などの症状がある場合は、無理をせず早めに医療機関へ相談しましょう。

【脚注一覧】

[1] Deyo RA, Weinstein JN. Low back pain. N Engl J Med. 2001;344(5):363-370.
日本整形外科学会・日本腰痛学会(監修)『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』南江堂, 2019.

[2] Hoy D, et al. A systematic review of the global prevalence of low back pain. Arthritis Rheum. 2012;64(6):2028-2037.
Manchikanti L, et al. Epidemiology of low back pain. Pain Physician. 2009;12(4):E35-70.

[3] Su X, et al. Acupuncture for acute low back pain: a systematic review and meta-analysis. Ann Palliat Med. 2021.

[4] Deyo RA, Weinstein JN. Low back pain. N Engl J Med. 2001;344(5):363-370.
腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版):Clinical Question「単純X線・MRIは急性腰痛の初期診療に必須か」の項。

[5] 日本整形外科学会・日本腰痛学会(監修)『腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版)』南江堂, 2019.(受診を要する危険信号=red flagsの項)

[6] Dahm KT, Brurberg KG, Jamtvedt G, Hagen KB. Advice to rest in bed versus advice to stay active for acute low‐back pain and sciatica. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(6):CD007612.
Hagen KB, Jamtvedt G, Hilde G, Winnem MF. The updated Cochrane review of bed rest for low back pain and sciatica. Spine. 2005;30(5):542-546.
腰痛診療ガイドライン2019:「急性腰痛に安静は有効か」の項。

[7] Lee JH, Choi TY, Lee MS, Lee H, Shin BC, Lee H. Acupuncture for acute low back pain: a systematic review. Clin J Pain. 2013;29(2):172-185.
Su X, et al. Acupuncture for acute low back pain: a systematic review and meta-analysis. Ann Palliat Med. 2021.

[8] 腰痛診療ガイドライン2019(改訂第2版):体幹装具(コルセット)の使用に関する項。

・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。