アトピー性皮膚炎とは、強いかゆみを伴う湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性の皮膚疾患です。[1]

皮膚のバリア機能が低下しているため、乾燥しやすく、外からの刺激を受けやすい状態になっています。

そのため、炎症やかゆみが起こりやすくなることが特徴です。[2]

子どもに多い病気ですが、大人になってから発症したり、症状が続いたりすることもあります。[3]

年齢によって症状が出やすい部位には特徴があります。

なぜ起こるの?

アトピー性皮膚炎は、体質と環境要因が複雑に関係して起こると考えられています。

主な要因として、
・皮膚のバリア機能の低下
・免疫反応の乱れ
・アレルギー体質
などがあります。[2][4]

皮膚のバリア機能が弱くなると、汗や乾燥、刺激物などの影響を受けやすくなります。[2]

さらに、
・ストレス
・睡眠不足
・気温や湿度の変化
・汗
などによって症状が悪化することがあります。

また、アレルギー体質の方では、
・ハウスダスト
・ダニ
・花粉
・食物
などが症状に関与する場合があります。[2]

ただし、原因はひとつではなく、複数の要因が重なって発症すると考えられています。[4]

どんな症状が出るの?

主な症状は、強いかゆみと湿疹です。

皮膚が赤くなったり、乾燥してカサカサしたり、ひび割れやかさぶたができることがあります。

かゆみによって皮膚をかくと、さらに炎症が悪化し、症状が長引くことがあります。[2]

慢性的に炎症が続くと、皮膚が厚く硬くなることもあります。

症状が出やすい部位は年齢によって異なり、
・乳児では顔や頭
・子どもでは首やひじ、ひざの内側
・成人では首や上半身、手
などによくみられます。[5]

どうやって診断するの?

診断は、皮膚の状態や症状の経過を確認しながら行います。

かゆみの有無や湿疹の特徴、繰り返しているかどうかなどを総合的に判断します。

また、家族歴やアレルギー体質の有無について確認することもあります。

必要に応じて、血液検査でアレルギー反応や炎症の程度を調べる場合があります。

ただし、典型的な症状がある場合には、検査を行わなくても診断できることがあります。[5]

治療の基本

アトピー性皮膚炎の治療では、症状を抑え、再発を予防することが大切です。

治療の基本は、皮膚を清潔に保ち、しっかり保湿することです。

保湿を続けることで、皮膚のバリア機能を守り、刺激を受けにくくします。[6]

炎症が強い場合には、医師の指示のもとで、
・ステロイド外用薬
・タクロリムス軟膏などの免疫調整薬
・JAK阻害薬外用剤
・抗ヒスタミン薬の内服
などが使用されます。[6]

症状が重い場合には、生物学的製剤や内服薬が検討されることもあります。[6]

日常生活では、
・皮膚を強くこすらない
・入浴後すぐに保湿する
・刺激の少ない衣類や洗剤を選ぶ
・汗をかいたら早めに拭く
などの工夫も大切です。

また、ストレスや睡眠不足によって症状が悪化することもあるため、生活リズムを整えることも重要です。

鍼灸は役立つの?

鍼灸は、アトピー性皮膚炎そのものを治す治療ではありません。

しかし、かゆみやストレスの軽減、体調管理を目的として、補助的に用いられることがあります。

鍼やお灸によって、自律神経のバランスや血流が整い、心身の緊張が和らぐ可能性があると考えられています。

一部の研究では、かゆみや睡眠の改善がみられたという報告もあります。[7]

ただし、効果には個人差があり、十分な科学的根拠については現在も研究が続けられています。[8]

そのため、鍼灸は薬物治療の代わりではなく、医療と併用しながら行うことが大切です。

妊娠中の方や持病がある方は、主治医と相談しながら安全に受けましょう。

受診の目安

次のような場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

・かゆみや湿疹が強く、日常生活に支障がある

・症状が数週間以上続いている

・湿疹が広範囲に広がっている

・夜眠れないほどかゆみが強い

・皮膚に膿、強い赤み、熱感がある

・市販薬を使っても改善しない

皮膚の感染症を伴っている場合もあるため、悪化する前に相談することが大切です。

まとめ

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹を繰り返す慢性の皮膚疾患です。

皮膚のバリア機能や免疫、生活環境など、さまざまな要因が関係しています。[2][4]

治療では、保湿と適切な薬物療法を続けながら、悪化を防ぐことが重要です。[6]

鍼灸は、心身の緊張を和らげ、かゆみやストレスの軽減を助ける方法として役立つ可能性があります。[7][8]

症状が続く場合は、一人で悩まず、皮膚科などの医療機関へ相談しましょう。

【脚注一覧】

[1] 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会(作成)『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021』日本皮膚科学会雑誌. 2021;131(13):2691-2777.(増悪・軽快を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であるとの定義)

[2] アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021(皮膚バリア機能低下の中心的病態としてフィラグリン遺伝子変異等が確認されていること、バリア機能低下によりアレルゲン侵入とIL-4・IL-13・IL-31などの炎症性サイトカイン産生が誘導され、瘙痒と湿疹の悪循環が生じるとする病態記載)。

[3] アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021:年齢別有症率に関する図表(乳幼児期に高い有症率を示す一方、成人期にも症状が持続または新規発症する例があるとの記載)。

[4] アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021(体質(遺伝的要因)と環境要因が複合的に関与する多因子疾患であるとする記載)。

[5] アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021:診断基準の項(瘙痒、特徴的な皮疹と分布、慢性・反復性の経過という3項目を満たすことで診断可能であり、典型例では血液検査は必須ではないとの記載。年齢による好発部位の違い(乳児:顔・頭部、小児:頸部・肘窩・膝窩、成人:上半身・頸部・手など)についても同ガイドラインに記載)。

[6] アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021(外用療法(ステロイド外用薬、タクロリムス軟膏、デルゴシチニブ軟膏等のJAK阻害薬外用剤)とスキンケア(保湿)を治療の基本とし、重症例では生物学的製剤(デュピルマブ等)や経口JAK阻害薬が検討されるとする治療戦略)。

[7] Pfab F, Kirchner MT, Huss-Marp J, Schuster T, Schalock PC, Fuqin J, Athanasiadis GI, Behrendt H, Ring J, Darsow U, Napadow V. Acupuncture compared with oral antihistamine for type I hypersensitivity itch and skin response in adults with atopic dermatitis: a patient- and examiner-blinded, randomized, placebo-controlled, crossover trial. Allergy. 2012;67(4):566-573.(アレルゲン誘発性のかゆみ・皮膚反応に対して、鍼治療が偽鍼や無治療と比較して有意な軽減効果を示したとする20例のクロスオーバー試験)
Jiao R, Yang Z, Wang Y, Zhou J, Zeng Y, Liu Z. The effectiveness and safety of acupuncture for patients with atopic eczema: a systematic review and meta-analysis. Acupunct Med. 2020;38(1):3-14.(8件のRCT・434例のメタ解析。かゆみ・EASIスコアの改善を示唆する結果だが、エビデンスの質は低いとされている)

[8] Tan HY, Lenon GB, Zhang AL, Xue CC. Efficacy of acupuncture in the management of atopic dermatitis: a systematic review. Clin Exp Dermatol. 2015;40(7):711-715.(アトピー性皮膚炎そのものへの鍼治療の有効性を検証した質の高いRCTが不足しており、現時点でエビデンスに基づく明確な結論は出せないと結論。より厳密に設計されたRCTが必要とされている)

・これらは、お知らせブログの過去の記事を転載したものです。
・過去の記事のため、一部内容を加筆・修正しています。
・2026年8月:脚注をAIを用いて追加しました。