刺鍼の手技とは、鍼を皮膚に当てる方法や、刺した鍼を進めたり引いたりする方法、方向を変えたり、別の刺激を加えたりする技術のことです。
手技は古くから流派や地域、時代によってさまざまで、古典には四法、八法、十円の鍼法、九変に応じる鍼法、十二経に応じる鍼法、五臓に応じる鍼法、繆刺や巨刺などが記されています。
日本で特に発達した杉山真伝流には、九十余術、いわゆる百術鍼法として多くの手技が伝えられています。現在よく用いられる刺鍼手技の多くも、この杉山真伝流の伝統を受け継いだものです。
近代の鍼灸教科書では名称や分類に多少の違いがありますが、ここでは一般的によく使われる手技について説明します。
1.単刺術
単刺術は、鍼を目的の深さまで刺し、そのまま動かさずに抜く手技です。
比較的弱い刺激を与える目的で用いられます。
2.雀啄術
雀啄術は、鍼を上下に細かく動かす手技です。
刺入中や一定の深さまで刺した後に、小鳥が餌をついばむように鍼を少しずつ上下させます。
刺激の強さは調整でき、弱い刺激にも強い刺激にも用いられます。
鍼柄を持って行う方法と鍼体を持って行う方法があり、鍼体を持つ場合は押手の指に刺手の指を添えると操作しやすくなります。
3.間歇術
間歇術は、鍼を一定の深さまで刺した後に一度抜き、少し時間を置いてから再び同じ深さまで刺す手技です。
途中で間を置くことから、この名前があります。
強い刺激を与えたいときや、血管を広げたり筋肉を緩めたり、神経の興奮を鎮めたりするときに用いられます。
4.屋漏術
屋漏術には二つの方法があります。
第1法
鍼を三分の一ずつ段階的に刺し、その都度しばらく置きます。抜くときも三分の一ずつ段階的に抜きます。
第2法
鍼を三分の一ずつ刺し進めながら雀啄術を行い、それを数回繰り返して抜く方法です。
こちらは強い刺激を与えたい場合や、間歇術に近い効果を目的とするときに用いられます。
5.振顫術
振顫術は、一定の深さまで刺した鍼を細かく振動させる手技です。
鍼体を持って行う場合は押手の指に刺手の指を添え、鍼柄を持つ場合は比較的弱い振動を与えます。
また、刺入中の鍼を鍼管で軽く叩いて振動を与えることもあります。
6.置鍼術
置鍼術は、鍼を一本または数本刺したまま一定時間置いておく手技です。
一本の場合は押手を離さずに行い、複数本の場合も鍼の状態をよく観察します。
現在では主に制止作用を目的として用いられます。
7.旋撚術
旋撚術は、刺入時や抜鍼時に鍼を左右へ半回転させる手技です。
中程度の刺激を与える際によく用いられます。
回転の速さや深さ、持続時間によって、興奮作用にも制止作用にもなります。
8.廻旋術
廻旋術には二つの方法があります。
第1法
刺入するときに一定方向へ回しながら進め、抜くときに反対方向へ回す方法です。
第2法
目的の深さまで刺した後、その場で回転させる方法です。
皮膚や筋肉に鍼が巻き付くような状態になるため、抜く際には十分に緩めてから行います。
強い刺激が必要な場合や、緊張した筋肉や神経への施術に用いられます。
9.乱鍼術
乱鍼術は、複数の手技を組み合わせて強い刺激を与える方法です。
10.副刺激法
副刺激法は、刺入した鍼の周囲を弾いたり叩いたりして刺激を加える手技です。
強い刺激が必要な場合や、鍼が抜けにくい場合などに用いられます。
11.示指打法
示指打法は、鍼を刺した後に鍼管の上端を指で叩く手技です。
強い刺激を与えたい場合や、抜鍼が困難な場合に行われます。
12.随鍼術
随鍼術は、患者と術者の呼吸を合わせて行う手技です。
患者の呼気に合わせて刺入し、吸気で止めます。抜くときも呼吸に合わせて行います。
血管を広げたり、筋肉を緩めたりする目的で用いられます。
13.内調術
内調術は、刺入した鍼の鍼柄を叩いて振動を与える手技です。
血管や筋肉を収縮させる目的で用いられます。
14.細指術
細指術は、鍼を鍼管に収めた状態で鍼柄を小刻みに何度も叩き、振動を与える手技です。
制止作用を目的として用いられます。
15.管散術
管散術は、知覚過敏などで直接刺鍼できない場合に行う手技です。
鍼管を皮膚に当てて軽く叩き、間接的に刺激を与えます。
16.鍼尖転移法
鍼尖転移法は、鍼先を皮下に留めたまま皮膚を滑らせるように動かし、刺激を与える手技です。
反射機能を高めたり、強い刺激を与えたりする目的で用いられます。
17.刺鍼転向法
刺鍼転向法は、刺入した鍼の方向を途中で変える手技です。
斜鍼を直鍼に変えたり、横鍼に変えたりするときに用います。
場合によっては制止作用を与えることもあります。
鍼の方向の種類
- 直鍼:皮膚に対して垂直に刺す方法
- 斜鍼:斜めに刺す方法
- 横鍼:皮下に沿って水平に刺す方法
小児鍼
関西地方では古くから「小児疳虫ばり」と呼ばれる小児鍼が行われていました。
小児鍼には、わずかに出血させるものから、皮膚に軽く触れて刺激するものまでさまざまな種類があります。
藤井秀二博士の双管小児鍼や無管小児鍼は、比較的軽い刺激を与える方法です。
小児鍼は、消化不良、疳虫、夜泣き、夜驚、不眠、遺尿、発育不全などに用いられてきました。
刺激が自律神経を介して血液循環や全身の組織に働きかけ、体の機能を整えることが期待されています。
参考文献 柳谷素霊『鍼灸の実技』(昭和三十四年)
